2021年12月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2021年12月号エスト賃貸経営新聞

コロナ禍にも比較的落ち着きを見せる賃貸市場も競争激化の傾向強める
賃貸需要を支える人の動きが鈍い分、市場の圧迫要因に


ウィズコロナ時代の中、人々の活動が経済成長の原動力になろうとしています。
賃貸住宅市場も昨年、今年と続くコロナ禍による影響は小さくありませんが、新たな価値の創出、様々な工夫で対応して参りました。
今年一年の主だった出来事をふり返ってみます。


2年に及ぶコロナ禍による厳しいダメージが続く社会において、賃貸市場は比較的落ち着きを見せています。
例えば、賃料の傾向についても、不動産情報サービスのアットホーム(株)が発表した9月の全国主要都市の「賃貸マンション・アパート募集家賃動向」によると、マンションの平均募集家賃は、東京23区が3ヵ月連続、全面積帯で前年同月を下回った半面、神川・千葉の両県が全面積帯で前年同月を上回っています。

神奈川ではシングル向き、千葉ではカップル向きが平成27年1月以降最高値を更新し、アパートでは、東京都下・神奈川県・埼玉県・千葉県・福岡市が全面積帯で前年同月を上回りました。

一方、コロナ禍にあって、賃貸住宅の供給面での新設増が見られ、市場における競争は激化の傾向を強めています。

金融機関の貸し出しの厳格化とともに、賃貸住宅市場の需給調整などが影響して、貸家の新設着工数の減少が続いていましたが、春先以降から回復の兆しを見せ、9月の貸家の新設住宅着工数が前年同月比約13%増と7ヵ月連続の増加となりました。
これで、今年1~9月の9か月の合計は、前年比4.2%増の約24万戸です。
市場における賃貸受託経営への力強い投資意欲が戻っているのは間違いないようです。

ところで、新型コロナウイルスの感染症拡大とともに、話題を集めたのが、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方の「テレワーク」です。

益々求められるネット環境の完備

テレワーク需要の高まりを受けて賃貸マーケットも素早く反応して、「テレワーク、在宅勤務向け物件」の整備が進められています。
ただ、「急遽・短期間での実施だったことから、生産性が下がってしまったとの声も聞かれる」(総務省)との見方もあるので、在宅勤務・テレワークの定着がどこまで本格化するのか、今後の動きを見ないと分かりませんが、テレワークの動向は常にチェックしておく必要がありそうです。
そして、テレワークといえばインターネットは必須ですから、ネット環境の完備が益々求められます。

また、総務省が発表した9月の全国の市区町村間・都道府県間・都道府県内の各移動者数は、全て前年同月に比べ減少となっています。
昨年から今年にかけて春の一時期を除いて、コロナ禍の影響を受け、人口移動は大幅に減少したものです。
やはり賃貸需要を支える人の動きが鈍いことが、市場の圧迫要因となっているようです。





ニュースフラッシュ
雑誌などで部屋や暮らしのイメージをふくらませる
SNSでの住まい探しは今後のトレンドになりそう



不動産情報サービスのアットホーム(株)は11月1日、一人暮らしをしている、全国の18~29歳の学生・社会人男女を対象に実施した、現在住んでいる部屋の設備・条件や探した時の方法、重視したことなどについてのアンケート調査‟UNDER30”2021賃貸編の結果を発表しました。

それによりますと、住まい探しをする時には、SNS(Instagram・YouTube)や雑誌などで、部屋や暮らしのイメージをふくらませるかについて聞いたところ、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人が約65%。
イメージしていた一人暮らしができていると答えた人は約71%となっています。

UNDER30はSNSなどで調べ、イメージして探す傾向があるようです。
また、SNSでの部屋探しに興味があるかについては、2019年と比べ、学生全体で17.5ポイント、社会人全体で22.3ポイントと、大幅に割合が増えており、SNSでの住まい探しは、今後のトレンドになりそう、との調査結果となっています。





法廷通貨と似た機能から広がりを見せる「暗号資産」
来年にかけて加速しそうな運用スピード


デジタル社会形成の司令塔となるデジタル庁がスタートしました。
そうした折、不動産市場において存在感を見せ始めた「暗号資産」の問題点や最新の傾向をまとめてみました。


賃貸市場では、ここ1~2年の間に「不動産とテクノロジーの融合」が急速に進み、最先端の技術を活用して、不動産に関するサービスが展開されています。
AIを利用した物件提案やIoTを利用したスマートロック、防犯カメラ、VRを利用した内覧システムなどと幅広く、高機能化のスピードには目を見張るものがあります。

とくに、スマホを利用したカギの管理が進んできたところに、コロナ禍による消費者の非対面ニーズの高まりによって、IT化、VR、IT重説等の本格運用に拍車がかかったものです。

また、データとデジタルを総合的に活用するDX(デジタル・トランスフォーメーション)の急速な広がりと役割にも大きな期待が寄せられています。

こうしたハイレベルなテクノロジーの実用化とともに、不動産市場においては、暗号資産が広がりを見せています。

利用者の需給関係などで価格が大きく変動

仮想通貨は令和2年5月1日より「暗号資産」へ呼称変更され、支払・資金決済ツールとして利用されるケースが見られます。
インターネット上で自由なやりとりや通貨のような機能を持つ電子データで、法的通過と似た機能を持っていることから広がりを見せているものです。
実際の運用についてはまだハードルがあって、システムの開発を待たなければならず、現状では投資対象のトーンが強くなっています。

暗号資産について日本銀行は、インターネット上でやりとりできる財産的価値で、「資金決済に関する法律」において、不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、日本円や米国ドル等の法定通貨または法定通貨建ての資産ではない、と定義しています。

日本円や米ドルなどのように、国家やその中央銀行によって発行された法定通貨ではなく、裏付け資産を持っていないことなどから、利用者の需給関係などの様々な要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要、としています。

賃貸市場における暗号資産の実際の利用状況ですが、ごく一部で家賃として支払われたり、手数料に充当といった事例がありますが、今の段階はまだ限られた範囲となっています。

今後、来年にかけて運用のスピードは加速しそうです。





賃貸経営ワンポイントアドバイス
市場の実態、足下の賃貸経営の全体像を客観的にとらえて、
「出口戦略」を講じます



ポイントは大きく3つに集約

より効率的な賃貸経営を目指す「出口戦略」について、2回にわたってポイントをまとめてきましたが、いかがでしょうか。

「出口」と付けばなんとなく後ろ向きに聞こえますが、安定的な賃貸経営の発展のために、現況をチェックして常に次に備えることが要となります。
そのためにも出口戦略を‟損切り”と見立て、攻めの経営をして次のステップを狙うオペレーションと捉えてもいいのではないのでしょうか。
市場の実態、足下の実情など全体像を見据えて最上の手段を講じることも重要だと思います。

これまでにご紹介しました出口戦略のポイントは、次の①~③に集約されます。

①物件を「売却」して現金を得る。
処分して得た資金で、高収益が見込まれる物件に「買い替え」たり、金融資産や不動産投信などに「資金を分散」化して、収益の多様化を図り、不動産収益の向上を果たします。

②市場は活況を呈している時こそが出口戦略に着手する好機。
市場の動きが活発な時は、売るにも買うにも市場の‟勢い”に乗ることができます。

③取り組みにはトータルプロデュースするプロパティマネジメントのノウハウが必要とされ、物件の転売、新規購入には慎重に事業パートナーを選ぶことが求められます。

賃貸経営は多くの人に住居を提供するビジネスです。
起動にさえ乗れば安定した定期収入が見込まれ、当節の経済問題として浮上している物価上昇・インフレにも強いのですが、ビジネスだけにやはり競争は避けられず、消費者(入居者)ニーズに的確に答えていかないと、アッという間に取り残されることにもなりかねません。

出口戦略はあくまでも一つの選択肢で、要は市場の実態、足下の賃貸経営の全体像を客観的にとらえて、的を得た時勢に乗った経営を運営することが何よりも求められるのです。





ちょっと一服
東京23区内の住宅・アパートの平均築後年数は26.9年


東京都は今年で47回目となる「東京の土地2020(土地関係資料集)」を公表しました。
それによりますと、令和3年1月1日時点の住宅地の地価は、東京都全体で前年のプラス2.8%からマイナス0.6%と大幅な下落となりました。

ちなみに、商業地は平成26年以降プラス値であったのが、マイナス値に下落。

また、令和2年1月1日時点の23区の建物全体の平均築後年数は、平成31年に比べて0.3年増加して27.3年で、うち住宅・アパートは同0.4年増の26.9年、住宅・アパート以外は同0.3年増の28.4年となっています。

築27~28年といえは、平成6~7年頃に建設された建物ですから、それほど昔というイメージではありません。

ところで、全国の住宅事情を調査した「住宅市場動向調査報告書」(令和2年度版)では、賃貸住宅の平均築後年数は15.9年で、建築時期別に見ると、「平成27年以降」が全体の約37%、「平成17~26年」が約11%、「平成7~16年」が約14%、「昭和60~平成6年」が約17%といった割合です。




新型コロナウイルス感染症拡大後の「住み続けたい街の魅力」
やはり、「医療施設」の充実に高い関心
そして、生活環境の利便性を求めています



かつてない2年に及ぶコロナ禍を体験した、人々の住居に対する価値観の変化を調査したデータが、(株)リクルートの住まい領域の調査研究機関、SUUMOリサーチセンターから発表されました。

回答者が1都4県、4万3千人に及ぶ調査の「住まいの街の魅力に関する実態調査」(複数回答)で、それによると、「新型コロナウイルス感染症拡大後に、より重視するようになった街の魅力項目」の1位は「強まった条件はない」。
そして、2位に全回答者の約23%の人が病院や診療所などの「医療施設が充実している」ことを、より重視するようになったと回答しており、やはり医療施設が高い関心事となっています。

「行政サービス」「防災対策」「防犯対策」の充実を求める

また、「歩ける範囲で日常のものはひととおり揃う」「1回の外出で複数の用事を済ませられる」もそれぞれ15%、12%の人がより重要視するようになったと答えています。

これは蜜を避ける、不要不急の外出を避けるということで、交通機関を利用することなく日用品の買い物などを行える生活利便性が、より求められるようになったと考えられます。

さらに、「散歩・ジョギングしやすい」も約13%の人がより強まったと答えています。
家で過ごす時間が増え、やはり気分転換のために散歩等の需要が高まったと考えられるものです。

このほかに、「行政サービスが充実している」「防災対策がしっかりしている」「防犯対策がしっかりしている」「徒歩や自転車での移動が快適だ」「公園が充実している」「物価が安い」などが続き、生活環境の利便性を求めているのがよく分かります。

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