2022年3月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2022年3月号エスト賃貸経営新聞

融資などプラスの条件が重なり、賃貸住宅の新設が相次ぐ
新風が吹く賃貸住宅市場、今年は新しい展開が予想


新型コロナウイルスの感染拡大が始まって、今年で3年目を迎えます。
変異株の「オミクロン株」もやや落ち着きを見せ、コロナ慣れのもと手探りの生活が続いています。
春のシーズンの賃貸市場も佳境に入っていますが、市場で見られる主だった動きを紹介します。


コロナ禍の影響で外出を控えて自宅で過ごす時間が増えたことから、当初、入居者間や近隣住人とのクレームが起きて、一部住み替えが見られましたが、ごくわずかな事例で、大半は特に目立った問題は起きていません。
逆に、在宅勤務が増えたことから、広めの間取りを求める住み替え需要の問い合わせを多くいただきます。

そのせいか、問い合わせにも最寄り駅歩分数・間取り数(広さ)・家賃を以前にも増してシビアにチェックする傾向が強まり、今までは敬遠され気味の駅から遠い物件も契約率が高まっています。

いずれにしましても、部屋をお探しのお客様は「メール」の問い合わせから、「リモート」接客、そして、「オンライン」内見といった非対面・非接触型の強い要望が定着しつつありますので、私どもも多くのデジタル機器を活用して、対応するとともに、3密回避、マスクの着用、手指衛生等の感染対策を徹底して、ご案内しています。

ただ、お客様のデジタル・オンライン化の要望は年々強まっていますが、全てをデジタル・オンライン化で完結する数はまだ、限られています。

ところで年が明けて2ヵ月ほどですが、この間、賃貸住宅向けに新しい「商品システム」が相次いで発表されています。
一部を紹介します。
CO2排出量実質ゼロの電気を都市型賃貸レジデンスに導入(東京ガス不動産)、賃貸住宅向けのサブスクリプションサービスを開始(パナソニック)、ITエンジニア等のTECH人材向けコミュニティ型賃貸住宅と飲食店で構成する複合ビルの竣工(東急)、都心型賃貸マンションの共有部に、食品や日用品の無人販売が可能なコンビニエンススタンドサービスを導入(大阪ガス都市開発)などです。
やはり消費者(入居者)の心をつかむために、新風が吹いていることを示しています。

令和3年の新設貸家は
前年比約5%増の32万戸


そして、賃貸住宅の新設が相次いでいます(「ユースフラッシュ」参照)。

令和3年1年間に新設された貸家は32万戸で、前の年に比べて約5%増と4年ぶりの増加となりました。
背景にあるのは、①根強い賃貸経営への関心と投資意欲②新築に対する賃貸市場の期待感③金融機関の貸出緩和の動きなどが挙げられます。
賃貸不動産向けの金融機関の融資姿勢には、まだ厳格化が見られますが、一時よりはやや緩くなったようです。

賃貸市場に課題を残しながら新築が増加する今年は、新しい展開が予想されます。





ニュースフラシュ
令和3年の貸家の新設、4年ぶりの増加
2府13県で前年比2ケタ以上の伸び



賃貸住宅の新設増が全国各地で見られますが、国土交通省から発表された集計によると、令和3年1年間(令和2年4月~令和3年3月)の貸家の新設着工戸数で前年比2ケタ以上の伸びを見せたのは、岩手、宮城、福井、山梨、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、奈良、広島、山口、香川、佐賀、鹿児島の2府13県です。
3大都市圏別でも首都圏が前年比3.2%増、中部圏が10.3%増、近畿圏が13.8%増の伸びを見せています。

なお、令和3年の住宅の新設全体の約38%を貸家が占めており、令和元年以降ここ3年間変わらない割合です。





民営借家世帯は一般世帯全体の3割を占める
世帯数はここ20年来、一貫して増加


人口が減少する中、世帯数は増加しています。
この世帯数の伸びが賃貸住宅の需要を底堅く支えていることははよく知られています。
最新のデータから世帯数の実態を見ていきます。


「令和2年国勢調査」の結果によると、令和2年10月1日現在のわが国の一般世帯数は5,570万5千世帯となっています。

前回調査の5年前の平成27年に比べて、人口が約95万人減少したのに対して、世帯数は237万3千世帯の大幅増です。
1世帯当たりの人数は2.21人で、一般世帯数がここ20年来、一貫して増加しているのに対して、1世帯当たり人数は年々減少しています。

一般世帯数を世帯人員別に見ると、世帯人員が1人の世帯が2,115万1千世帯と最も多く、一般世帯のおよそ約4割近くを占め、世帯人員が多くなるほど世帯数は少なくなっています。
平成27年と比べると、世帯人員が
2人以下の世帯は増加しているのに対し、3人以上の世帯はいずれも減少しており、とくに5人以上の世帯は10%以上減少しています。

65歳以上の人がいる世帯は
一般世帯全体の4割


一般世帯数を都道府県別に見ると、やはり東京都が721万7千世帯と最も多く、次いで神奈川県の421万世帯、大阪府の412万7千世帯で、最も少ないのが鳥取県の21万9千世帯となっています。

ところで、一般世帯数の住宅所有の関係を見ると、「持ち家」が3,372万9千世帯(住宅に住む一般世帯の61.4%)と最も多く、次いで「民営の借家」が1,633万1千世帯(29.7%)、都道府県営住宅や市町村営住宅の「公営の借家」が190万2千世帯(3.5%)、社宅や公務員宿舎などの「給与住宅」が155万2千世帯(2.8%)、「都市再生機構・公社の借家」が74万7千世帯(1.4%)となっています。

住宅の約3分の1を賃貸住宅が支えていることが分かります。
「持ち家」の割合は、平成27年と比べると、62.3%から61.4%に低下しています。

なお、65歳以上世帯員のいる一般世帯数は2,265万5千世帯で、一般世帯の4割強を占め、65歳以上のうち単独世帯の人口は671万7千人。
65歳以上人口に占める割合は19%で、65歳以上の約5人に1人が一人暮らしとなっています。





賃貸経営ワンポイントアドバイス
総人口に占める65歳以上の割合は約29%
長い目で見れば高齢者対応も視野に



「少子高齢化」は賃貸経営の根幹を捉えたキーワード

「少子高齢化」は時代を語る一つのフレーズとして、広く使われていますが、人口減少とともに、少子高齢化は賃貸住宅経営の根幹を捉えたキーワードともいえます。
高齢者対応、及び高齢者を潜在需要者としてどのように見ていくか、これからの賃貸経営の手がかりになるのではないでしょうか。

2020年10月1日現在におけるわが国の人口は1億2,614万6千人です。
そのうち、65歳以上は3,602万7千人。
総人口に占める65歳以上人口の割合は5年間に26.6%から28.6%に上昇して、世界で最も高い水準となっています。

その推移を見ると、昭和25年以前は5%前後で推移していましたが、その後は上昇が続く一方で、昭和60年には10%を、平成17年には20%を超え、令和2年は28.96%まで上昇したものです。

総人口に占める65歳以上人口に割合を都道府県別に見ると、秋田県が37.5%と最も高く、次いで高知県、山口県となっており、45道府県では25%以上となっています。
それに対し、沖縄県が22.6%と最も低く、27%未満では東京都、神奈川県、愛知県、滋賀県となっています。

全都道府県で65歳以上人口の割合が15歳未満人口の割合を上回り、平成27年の総人口に占める65歳以上人口の割合と比べると、秋田県の3.7ポイントを最大として全都道府県で上昇しています。

こうした統計からも、紛れもなく日本の高齢社会の現実を目の当たりにします。

そこで賃貸経営との関連ですが、やはり長い目で見れば、高齢者対応はシステマチックな取り組みも視野に入れておくべきではないかと思われます。
ボリュームとしてのマーケット規模とどう取り組むかが課題ではないでしょうか。

システマチックな取り組みにつきましては別の機会に取り上げさせていただきます。





ちょっと一服
時代の変化に合わせ、
賃貸経営にも発想の切り替えが求められます



今号は賃貸住宅の経営と関わりの強い「世帯数」「高齢者」「外国人」の実情について、最新のデータをもとに取り上げてみました。

とにかく、物件はそれぞれの条件が一つひとつ違いますので、一括りとして捉えることはできませんが、賃貸住宅を取り囲む一つの傾向として、見ておくことも必要ではないでしょうか。

社会環境も時代とともに大きく変化しますので、賃貸経営においても発想の切り替えが常に求められるようです。

市場においてシーズンの前半の動きが鈍かった分、これから4月半ばにかけて、部屋をお探しのお客様の問い合わせや来店が増えることが予想されます。

空室、条件等の確認に急な連絡をさせていただくことが出てきますので、携帯電話をお手元にお持ちいただくなど、連絡先の手配をよろしくお願いします。

新型コロナウイルス・オミクロン株の拡大で、人の動きが大きく鈍っていますが、本紙が読者の皆様の手元に届く頃にはピークアウトしていることを願ってやみません。





外国人動向の最新データ:総人口のうち日本人97.8%、外国人2.2%
5都府県に住む外国人が
わが国に住む外国人人口の54%を占めています



賃貸住宅経営にも関係する外国人動向を最近発表された最新のデータから見ていきます。

令和2年10月1日現在の日本人人口は平成27年から1.4%減少し、約1億2,340万人となりました。
そして外国人人口は274万7千人です。
27年からの5年間で43.6%増え、総人口の割合で日本人は97.8%、外国人は2.2%となっています。
27年と比べると、日本人は178万3千人減少し、外国人は83万5千人増加したものです。

外国人人口が多い都道府県は、東京都が56万4千人で外国人人口の20.5%と最も多く、次いで愛知県が25万9千人、大阪府が24万2千人、神奈川県が23万1千人、埼玉県が18万6千人となっており、これら5都府県に住む外国人人口の53.9%を占めています。
都道府県人口に占める割合では、東京都が4%と最も高く、次いで愛知県が3.4%、群馬県が3.1%となっています。

コロナ禍後、引き続き外国人の増加は見込まれる

この5年間で外国人人口の割合が大きく上昇した地域について見ると、外国人の割合は、全国的に上昇しており、とくに大都市において強くその傾向があります。
しかし、割合が大きく上昇した市区町村の上位は、かならずしも大都市ばかりではなく、リゾート開発によるレジャー関連産業が盛んな北海道や、外国人向けの学校が設立された群馬県など、地域事情を背景として割合が上昇しているところもあります。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限により、令和2年の単年で見れば、外国人の入国は減少していますが、いずれ元の環境に戻れば、引き続き外国人は増加していくことが見込まれます。
今後、人口の減少に伴う人手不足が懸念される日本にとっては、外国人の動向にはさらに注目が集まると思われます。


※参照:「令和2年国勢調査」人口等基本集計結果(総務省)、統計 Today No.180「令和2年国勢調査」-人口等基本集計結果からみる我が国の外国人人口の状況-(同)