2017年6月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2017年6月号エスト賃貸経営新聞

「平成28年度住宅市場動向調査」に見る賃貸住宅市場の最新傾向
賃貸物件を探す窓口は不動産会社が首位を占める


住宅白書といわれる「住宅市場動向調査」結果が年1回国土交通省から発表されます。
このほど発表された平成28年度版から、賃貸住宅の選択理由、世帯主の構成、家賃の傾向など、賃貸住宅入居者の平均像を読み取ります。

この調査は首都圏、近畿圏、中部圏を中心に実施された住宅調査で、「賃貸住宅市場」のマクロ的な傾向を示しており、市場の主だった動向を理解するのに参考になります。

それによりますと、「賃貸住宅の選択理由」についてのベスト5は、「家賃が適切だった」が最も多く、全体の6割近くを占め、次いで「住宅の立地環境が良かった」「住宅のデザイン・広さ・設備等がよかった」「親・子供などと同居または近くに住んでいたから」と続きます。
6位が昨年同様、「信頼できる不動産業者だったから」で、過去5年間ほぼ同じ結果です。

このように賃貸住宅を選ぶ理由として、①家賃②立地・環境③部屋の広さ・設備の3点に集約されていることがよく分かります。
その上で、「信頼できる不動産業者」の的確なアドバイスで契約されているのが国の調査により証明され、手応えを感じます。

事実、物件に関する情報収集の方法として「不動産業者で」が約46%、次いで「インターネットで」が約41%と、賃貸物件を探す窓口は不動産会社が首位を占めています。
この他には、「知人等の紹介」「住宅情報誌」などがありますが、主流は不動産業者とインターネットとなっています。

そうした傾向の中にあって、インターネット、スマホがこれだけ普及しても人と人が対面して、物件を詳細に理解した上で契約を結んでいるのがよく分かります。
やはり賃貸市場において、お部屋を探す基本は入念に説明を受けて、信頼できる不動産不動産会社の窓口で契約するのが一番、というのは変わらないようです。

築10年ものが市場の約42%
築20年もので全体の約6割強


次に、賃貸住宅を選ぶ際に重要視した設備等としては、「間取り・部屋数が適当」(住宅の広さが十分)「台所の設備・広さが十分」「浴室の設備・広さが十分」「住宅のデザインが気に入った」がベスト5で、この5項目も過去5年間、順位に違いがあってもほぼ同じ内容です。
選択する設備関連の基本は、間取り・部屋数・広さ・台所設備・浴室設備・住宅デザインに代表されているようです。

ところで、賃貸住宅の建築時期(築年数)は、「平成17年~26年」が約22%と最も多く、「平成27年以降」が約20%、「平成7年~16年」が約19%、「昭和60年~平成6年」が約20%となっています。
平均築年数は約17.2年。
ということはおよそ新築~10年者が市場の約42%、そして築20年もので全体の約6割強を占めていることになります。




「隣人交流型賃貸住宅」
他の生活者とともに一緒に暮らそうという発想から生まれた居住スタイル


「隣人交流型賃貸住宅」、何かいかめしい名称に聞こえますが、多様化する賃貸住宅の一つの形です。
個人主義を尊重してプライバシーが強すぎると、弊害として内にこもる傾向が出てきます。
隣の住人に何ら関心を示さないのが当たり前といった風潮が定着する一方で、台所のコトコトした音や掃除機をかける生活音を聞いて安心する、といった声も聞きます。

隣人交流型賃貸住宅は、他の生活者とともに暮らそうという発想から生まれた居住スタイルといえそうです。
シェアハウスやソーシャルアパートメントが挙げられます。
最新の設備を備えて、入居者間の交流をメインの目的にしています。
他にない特色を売りに、入居者のターゲットを絞り込んだマーケティングで、まさにアイデア勝負の様相を見せています。

ピンポイントにターゲットを絞り込んでプランニング

ターゲットを思い切り絞り込んで、入居者はまるで同好者の集まりのようです。
趣味的な要素や生きがいの追求、愛好家といった要素が含まれると、交流もスムーズに受け入れられるようです。
例えば自転車、オートバイを生活スペースに取り込んだ駐車場付きの隣人交流型の賃貸住宅。
自身の生活スペースに加えて、同好者と共同生活しながらコミュニケーションを深める住居スタイルです。

隣人交流型賃貸住宅をビジネスとして捉えるのなら、やはりピンポイントにターゲットを絞り込むプランが外せません。
入居者のプライバシーを尊重、確保しながら、居住者間の交流、ふれあいも大事にする住環境を取り入れるのも、これからの賃貸経営の選択肢かもしれません。




ニュースフラッシュ
平成28年度の貸家の新設着工戸数
前年度比11.4%増で、2年連続の増加



本紙では不動産市場に影響を及ぼす新築情報を折にふれ掲載しています。
国土交通省がこのほど発表した平成28年度(28年4月~29年3月)1年間の新設着工戸数は、前年度比5.8%増の97万4137戸で、2年連続の増加となりました。

このうち、貸家の28年度の新設着工戸数は、前年度比11.4%増の42万7275戸で、2年連続の増加となっています。

前年度比11.4%の高い伸びを見せた賃貸住宅の新設は、全国的な傾向で前年度比マイナスとなっているのは京都、岩手、宮城、和歌山の1府3県のみです。
対して大都市圏では首都圏が14.0%増、中部圏が8.5%増、近畿圏が10.5%増と大きく延ばし、その他地域でも10.1%増と、貸家の新設は全国的な傾向になっています。

事実、1年間に新設される住戸(戸数)のおよそ半分にあたる43.8%が賃貸住宅となっています。
前年度の27年度が41.6%、26年度が40.6%ですから、賃貸住宅の新設がいやがうえにも目立っています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
入居者に満足してもらい長く住んでもらう
サービスの内容次第で入居率が左右される



入居者を思いやるマインド

賃貸経営の安定のために、現在の入居者に長く住んでいただければ、これほどありがたいことはありません。
ですから入居者にいかに居心地よく暮らしてもらえるかに手を尽くすことが経営の眼目ではないかと思います。
具体的には次のようなことが考えられます。
入居者への積極的な声かけで、人間関係の密度を高め、諍いや不祥事の防止に役立てる。
できるだけ速く不満を察知して、早め早めに手を打っていく。
クレーム発生の場合、とにかく素早く対応して、解決を図る。
建物の定期検診、設備の日常の補修、修繕は入居者にはっきりわかるようにメリハリをつける。
そして、入居者を思いやるマインドではないでしょうか。

入居者に満足してもらって、長く入居してもらうコツは、こうしたことに集約されていると思われます。
入居者に対して常に顧客満足を感じてもらえるサービスを提供して、入居者の長期居住を実現する、それが賃貸経営の安定につながるという流れになります。

賃貸経営の場合、家賃等の入居条件に見合った賃貸住宅を貸主、借主双方が合意のもとに、賃貸借契約を結んで提供するのですから、そもそも現況の住宅以上のサービスは必要ないのでは、という見方もあります。
しかし、顧客満足が提供するサービスの質で評価される色合いが強いだけに今後、サービスの内容次第で入居率を左右することになりかねません。

人の生活の拠点である住居が落ち着いてこそ生活も安定し、また賃貸住宅を積極的に肯定して取り入れる層が増加している時節だけに、入居者の気持ちを慮(おもんばか)る経営を大事にしたいと思います。

国土交通省の調査によりますと、賃貸住宅入居者の36%が何らかの困った経験をしているようですが、ヒューマントラブルを含めて、入居者の不安感を軽減することも必要かと考えます。




ちょっと一服
長々と続く6月の梅雨
建物の長雨の対策は早目に



6月ともなれば、これから3ヵ月間ほど、夏の厳しい気候が続きます。
毎日の生活に厳しいのですが、人同様に建物にとっても過酷で、真夏の直射日光の厳しさにはたじろいでしまいます。

6月はその走りとなる梅雨が長々と続きます。
カラ梅雨とか日照り梅雨の年もありますので、今から色々悩んでも仕方ありませんが、ただ梅雨の対策だけは早めにやておきましょう。
物件を傷める長雨を甘く見ては痛い目に遭いかねません。

国土交通省が年1回シンクタンクを使って調査する「住宅市場動向調査」の結果がこの時期に公表され、本紙でも毎年内容を紹介しています。
統計自体、全国の平均的な結果となっていて、地域性が強い賃貸住宅の動向としては、その内容がそのままどの物件にも当てはまるものではありません。
それでも国が時間も費用もかけて調査しただけに、賃貸住宅市場の直近の全体像を理解するのに参考となります。

市場が落ち着いているとはいえ、賃貸経営自体、大きな曲がり角に直面しているのを実感する今日この頃です。




賃貸住宅入居世帯動向
年齢構成は30歳未満、30歳代がともに3割
40歳代が約2割、50歳代、60歳代が1割



国土交通省が発表した「平成28年度住宅市場動向調査」結果から、賃貸住宅入居者の様子を見ていきたいと思います。

まず、入居世帯に関することですが、民間賃貸住宅入居世帯の世帯主の年齢は、30歳代が30.2%で最も多く、次いで30歳未満が29.7%で、平均年齢は39.2歳となっています。
およそ30歳未満、30歳代がともに3割、40歳代が約2割、50歳代、60歳以上が1割といった年齢構成です。

賃貸住宅入居世帯の居住人数では、1人が33.2%で最も多く、次いで2人が28.9%、3人が19.1%で、1~3人居住で全体の8割強を占めており、一世帯当たりの平均居住人数は2.3人です。

また、高齢者の居住については、高齢者が住んでいる世帯は10.6%で、住んでいないが75.9%、高齢者がいる世帯のうち高齢者のみの世帯割合は36.8%。
高齢者がいる世帯における高齢者の平均人数は1.4人となっています。
2年前の高齢者のみの世帯が約60%ですから大きく減少しています。
なお、18歳未満のいる世帯は33.8%。

入居世帯の36%が困った経験

ところで、賃貸住宅に関して困った経験については、入居世帯の36.0%が、賃貸住宅に関して困った経験(現在入居している住宅に限らない)を持っているようです。

普通借家の賃貸住宅に関する困った経験は、契約時について「敷金・礼金などの金銭負担」が51.5%で最も多く、次いで「連帯保証人の確保」が24.7%。
退去時については、「修繕費用の不明朗な請求」が25.8%で最も多く、次いで「家賃、敷金の清算」が18.0%となっています。




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