2022年9月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2022年9月号エスト賃貸経営新聞

管理機能の高度化が進み、PMの視点から収益の向上図る傾向が強まる
インフレ対応の賃貸住宅経営を視野に事業展開を


9月に入って本格的な「秋の賃貸商戦」が始まりますが、賃貸住宅市場は大きな変動も見られず底堅く推移しています。
ただ、世界的なインフレ懸念が拭えない中、インフレに対応する賃貸住宅経営は、常に視野に入れておく必要がありそうです。


米国のインフレがピークアウトしたとの見方が広まっています。
経済の不安定化に拍車がかかるインフレは避けたいだけに、インフレ懸念の後退は今後の景気指標の改善に期待が持てそうです。

わが国の場合、デフレ状態が長く、日本経済がデフレ状態から抜け出せずに苦戦していることはよく知られている通りです。
日本銀行は物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする目標を打ち出しており、あと数年で目標が達成されると見ています。
ただ、この2%のインフレが実現すれば、手持ちの現金や預貯金が目減りするということにもなります。

こうした背景もあって、時々の相場にスライドする賃料収入が見込まれる賃貸経営に人気が集中しているものです。

それが最も表れているのが、貸家の新設です。
6月分の貸家の新設着工は、前年同月比1.6%増の約3万戸で、16ヵ月連続の増加となりました。
民間資金による貸家は減少したが、公的資金による貸家が増加したため、貸家全体で増加したもので、新設着工の今年1~6月の合計では、前年比7.5%増の約16万5千戸です。

直近の6月の実績で、すでに1年半近く増加が続いていることから、1都2府20県で減少して一服感も出ているのですが、それでも全国のトータルで見れば増加傾向が止まりません。

賃貸住宅の新設増の一方で
投資マンションの売買も増加


このような賃貸住宅の新築の増設に合わせるように、賃貸経営の管理機能などの高度化が進んでいます。
経営の主体が個人オーナーから会社経営にシフトされ、物件の機能、サービス等の付加価値を高めるプロパティーマネジメント(PM)の視点から収益の向上を図る傾向が強まっています。

また、賃貸住宅の新設の一方で、投資マンションの売買も伸びています。
「首都圏投資用マンション市場動向」(不動産経済研究所)によると、令和4年上半期(1~6月)に供給された投資用マンションは、前年同月に比べ物件数、戸数とも増加し、平均価格、戸当たり価格、平方メートル単価全てが上昇しています。

今のところ国内ではまだ、顕著なインフレ減少が見られていませんが、今後、賃貸経営はインフレ対応を視野に入れておく必要があるといえそうです。





ニュースフラッシュ
『不動産業界のDX推進状況調査』結果
「電子契約システム」の導入検討が最多



最先端のデータとデジタル技術を活用して不動産に関するサービスを展開する「DX」(デジタルトランスフォーメーション)は、急速な発展を見せ、賃貸ビジネスのあり方を根底から変えようとさえしています。

不動産テック4社・2メディアからこのほど、『不動産業界のDX推進状況調査』の結果が発表されました。
それによると、今、導入を検討しているのは「電子契約システム」が最も多く、次いで「IT重説のためのシステム」「VR/オンライン内見システム」などで、2022年に導入される割合が最も高いのは「電子契約システム」。
DXの効果については、「とても効果を実感している・まあまあ効果を実感している」を合わせると70.7%。
具体的には「業務効率化・生産性向上」が最も多くなっています。





賃貸住宅関連の相談件数が全体の約4%
入居世帯の4分の1が困った経験あり


賃貸住宅の入居者は入居に際して、宅地建物取引業法を中心に多くの法律で様々な消費者の権利が保障されています。
それでも入居者からの苦情が絶えません。


(独)国民生活センターは8月9日、令和3年度の「消費生活相談」の概要を公表しました。
それによると、令和3年度の相談件数は約84万4千件で、令和2年度に比べ約10万件減少しています。
「架空請求」の相談、新型コロナ関連の相談等が減少したためです。

気になる賃貸住宅関連の相談ですが、「商品・役務等別相談件数」において、「賃貸アパート・マンション」は、相談件数が全体の3.9%に当たる約3万3千件で、3位を占めています。
1位が商品一般、2位が化粧品、4位が健康食品。
ちなみに、5位が移動通信サービスですから、賃貸住宅の相談件数は、とかくクレームが発生しがちな商品に囲まれています。

こうした相談内容の詳細については、今後、10月頃に発表予定ですが、クレジットカード情報の詐取に関する相談や架空請求の相談に交じって、生活に必要な住居、賃貸住宅に対する相談が、上位を占めていることに考えさせられます。

お客様のご不満、ご要望には
十分説明して理解していただく


ところで、首都圏、近畿圏、中部圏を中心に、全国規模で年1回公表される、『住宅市場動向調査報告書』(国土交通省)の令和3年度分で取り上げられている「賃貸住宅に関して困った経験」によると、民間賃貸住宅入居世帯の27%が、賃貸住宅に関して困った経験を有しているようです。

賃貸住宅は入居にも退去にも契約書に基づくルールに則って行われ、解約には金銭のやり取りがあるものですから、「修繕費用の請求」「家賃、敷金の精算」などについて、ともすれば十分な理解が得られず、見解の違い等もあって不満がつのり、相談に持ち込まれるケースに発展しがちです。

そのためにもやはり、お客様あっての賃貸経営であり、ビジネスですから、お客様のご不満、ご要望に真摯に耳を傾けることが必要と考えております。
契約・解約事項には何よりも法律の遵守が求められています。
私どもとしましても皆様に懇切、丁寧に説明して、理解していただくことに努めて参る所存です。





賃貸経営ワンポイントアドバイス
令和2年度における相続税の調査結果
追徴税額は過去10年間で最高の943万円



申告漏れ相続財産のうち
土地・家屋は217億円


コロナ禍における相続税に関する「令和2事務年度における相続税の調査の状況」の結果が、国税庁から公表されています。

新型コロナウイルス感染症の影響により、国税庁の相続税の実地調査件数が大幅に減少しましたが、大口・悪質な不正が見込まれる案件を優先して調査した結果等をまとめたものです。

それによると、令和2年度の実地調査1件当たりの追徴税額は943万円と、過去10年間で最高となりました。
申告漏れ課税価格は1,785億円、追徴税額は482億円となっています。

申告漏れ相続財産の金額の内訳は、その他の728億円が最も多く、続いて現金・預貯金等の529億円、有価証券が282億円、土地・家屋が217億円となっています。

ところで、相続税は、亡くなった方の遺産を相続した時に課税される税金で、相続した現金、預貯金、株式、不動産などの財産から被相続人の借り入れ金などの債務を差し引いた正味の遺産額に対して課税されます。

被相続人が死亡した日の翌日から10ヵ月以内に所轄(被相続人の住所地)の税務署に現金で納めます。

遺産額から基礎控除や債務を引いた額に課税されますので、土地の相続税評価額が下がると相続税も同時に軽減されます。
アパート・マンションを建てて賃貸経営をすることで、借地権と借家権が生じて相続税評価が下がることはよく知られている通りです。

また、相続税は現金で納付できない場合、「物納」することができます。
物納については、物納財産の評価が3種類に分けられ、不適格財産は取り扱われません。
境界がハッキリしない土地や担保権が設定されている土地、公道に通じない土地等は不適格財産とみなされます。

相続税の手配は、賃貸経営の延長線上にあるともいわれ、万一に備えて、手を打っておくことも求められるところです。





ちょっと一服
宅配便、メール便の取り扱い伸びる
都市鉄道の混雑率は横ばい傾向



宅配便の取り扱い実績と通勤・通学時間帯における鉄道の混み具合に関する調査データが、国土交通省から公表されました。

それによると、令和3年度の全国の宅配便取り扱い個数は、前年度比約2.4%増の49億5,323万個で、メール便取り扱い冊数は、前年度比1.1%増の42億8,714万冊となりました。

宅配便取り扱い個数の推移を見ますと、過去10年右肩上がりで伸び、とくにここ数年はコロナ禍の影響もあって、大きな進捗を見せています。
入居者ニーズの上位に宅配ボックスが占めているのはうなずけることです。

宅配便の便名ごとのシェアを見ると、トラック運送については、上位5便で全体の約99.8%を占め、「宅配便」「飛脚宅配便」「ゆうパック」の上位3便で約95%を占めています。

一方、令和3年度の3大都市圏における都市鉄道の混雑率は、東京圏が108%、大阪圏が104%、名古屋圏が110%となり、いずれの都市圏も前年度比でほぼ横ばいの調査結果となっています。





情報パック 賃貸併用住宅の実態調査『賃貸併用住宅の価値』
築1~10年の賃貸併用住宅では、
平均して敷地面積の1.38倍の延べ床面積で建築



自宅と賃貸住宅を一つ建物にまとめた「賃貸併用住宅」は、昔から人気が高く、土地活用の一環として経営されるオーナー様はたくさんおられます。

そうした賃貸併用住宅の実態やオーナー様の意識などを調査した『賃貸併用住宅の価値』が旭化成ホームズ(株)のくらしイノベーション研究所から発表されました。

賃貸併用住宅についてオーナーの意識をまとめた興味ある資料です。
同社が建設した築1~30年の賃貸併用住宅を調査したものです。

それによると、築1~10年の賃貸併用住宅の調査では、平均して敷地面積の1.38倍の延床面積で建築されており、都市の高度利用が求められている中で、都市の特性を活かせていることが確認でき、階数が高いほど最上階自宅型が増え、3階建ての約7割が最上階自宅型となっています。

入居者に挨拶をするオーナーは8割
入居者の顔が分かるオーナーは7割


一方、ワンフロアライフ対応住戸は91%で、そのうち71%が主要な生活空間が1階、または主要な生活空間にEVでアクセスできるフラットアクセスであり、高齢期も住みやすい住居となっています。

築21~30年のオーナーの家族人数は、平均3.8人から2.5人まで減少し、年数の経過による家族減への対応が課題。
すでに約40%が賃貸住戸に家族・親族が住むことを想定済みで、当初賃貸住戸に家族が居住し、家族減少時に賃貸へ戻す、または賃貸住戸を取り込んで家族住戸を拡大する実例もあります。

また、賃貸居住者に挨拶をするオーナーが8割。
入居者の顔が分かるオーナーは7割で、80代の高齢オーナーでは50代の4倍以上立ち話をするなどの交流をしているようです。

そして、経済価値としては賃貸併用住宅のメリットとして、ローン返済の軽減(87%)や安定収入、私的年金が得られる(85%)、子どもに将来収入を生む資産が残せる(85%)などの経済的価値が認識されています。