2017年9月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2017年9月号エスト賃貸経営新聞

問題個所を残しながら来年1月には本格運用に入る「民泊」事業
まだしばらくは試行錯誤の状態が続きそうです


賃貸住宅の空き部屋を有効活用できる、と期待感がやや先行した「民泊」事業が来年1月に予想される施行を前に、早や多くの難問に直面しています。
外国人を対象とする宿泊ビジネスだけに、管理、メンテナンス等においてまだ多くの問題を残しているようです。

民泊新法案の「住宅宿泊事業法案」が6月に可決、成立して以来、賃貸住宅の部屋を宿泊施設として有効活用できると、期待感が先行した「民泊」の本格的な運用に弾みがついています。

ここ1~2年、インバウンド(訪日外国人旅行者)関連のビジネスは大変な賑わいで、東京オリンピック開催までに来日客4千万人の目標が立てられています。
来日客が増えると宿泊客も増え、民泊の普及にも期待が寄せられ、すでに関連するビジネスが様々な分野で動き出しています。
人気が高く、需要があることから参画する企業も多く、問題個所を残しながらの船出となっているようです。

4年前の平成25年に、東京、大阪など「国家戦略特別区域」で、旅館業法を緩和して個人宅や賃貸住宅を宿泊施設などに活用する民泊が動き出しました。

民泊が全国で解禁される民泊法案は、法的な環境整備として、
①住宅宿泊事業を営もうとする場合、都道府県知事への届出が必要
②地域の実情を反映する仕組みを導入
③年間の営業日数の上限は180日
④仲介業者は観光庁長官への登録が必要
⑤住宅宿泊管理業を営もうとする場合、国土交通大臣の登録が必要
⑥無許可営業に対する罰金として上限100万円が課される
ことを挙げています。

民泊のニーズが高く、大きな需要が見込まれることから付帯するビジネスが各方面で先行しています。
部屋を有効的に貸すことで収入を得るビジネススタイルで、やり方次第で効率よく展開できるのですが、貸し出す部屋といっても、建物自体は共同住宅が主で他の人々が生活している場所です。

メリット、デメリットが明確なビジネスモデルの賃貸ビジネス

当然、共同施設の利用には普段から厳格なルールがあるのですが、数日間の宿泊者はこうしたルールを十分に理解することもなく出入りするのですから、元々の生活者と軋轢を生じ、一方的に住民にしわ寄せがくるのが現実となっています。
6月には大阪で分譲マンションの管理組合が民泊の営業中止と損害賠償を求めて訴えています。

民泊のメリット、デメリットははっきりしていて、ルール・法律にのっとって運用されればメリットが得られるのですが、ルール・法律が守られないと、『無法地帯』が生じることになり、目も当てられません。

すでに賃貸ビジネスの各分野で様々な動きが見られ、一棟民泊マンションや民泊物件に特化したサービス、民泊事業をサポートするビジネスの相次ぐ参入が続いていますが、まだしばらくは試行錯誤の状態といった部分が続きそうです。




賃貸住宅の「進化」と「IoT」「AI」の広がり
近い将来、賃貸住宅仲介に特化した
人的ロボットの出現が予測されます



賃貸住宅の「進化」は目覚ましく、建物のレベルアップを実現しています。
住み心地はもちろん防犯施設、宅配ボックス、高速インターネット・光ファイバーなど、高付加価値性能に目を見張るものがあります。
さらに技術革新が進み、ハイレベルなメカニックの実用化が進んでいます。

そうした中、最近では「IoT」とか「AI」という言葉を目にしない日はないと言ってもいいかもしれません。
IoTとは、パソコンやスマホなどの情報機器だけではなく、あらゆるものがインターネットにつながる「モノのインターネット」を指します。

そのIoTと賃貸住宅が急速につながる動きを見せています。
IoTが使われているのがスマートロックや防犯カメラ。
スマートロックはスマホなどを使ってドアを開閉したり鍵を管理する機器やシステム、サービス。
防犯カメラはよく知られている通り建物の出入り口や、エレベーター乗り場、廊下部に設置されて犯罪の抑止に役立っています。
こうした鍵のロックやカメラのチェックがインターネットを介して操作できるのが、IoTの特性と将来性です。

学習するのがAIの特徴

AI(人工知能)の特徴は何といっても決められた作業を単純に繰り返すだけではなく、学習しながら作業を進めるところです。

賃貸住宅のAIの取組みですが、統計理論の急速な発展で、部屋の問い合わせに対して、条件等を聞き出して最適な物件を自動で案内するといった使われ方が現実のものになろうとしています。
経費や実用性においてはまだまだ人の臨機応変なやり取りに勝るものはありませんが、賃貸住宅仲介に特化した人的ロボットが出てくるのではないでしょうか。




貸家の新設着工の増加現象にブレーキ
東京都内でも前年同月比3ヵ月連続の減少


およそ2年近く続いていた貸家の新設着工の増加現象に、ブレーキがかかり始めています。
国土交通省が発表したこの6月の新設住宅着工戸数によると、貸家の新設着工は前年同月比2.6%減の3万5967戸で、20ヵ月ぶりの減少となりました。

民間資金による貸家が減少し、公的資金による貸家も減少したため、貸家全体で減少となったものです。

20ヵ月ぶりに減少した貸家は、全国的にも前年同月比でマイナスとなったところが多く、都道府県別で見ると、1道1都24県で前年比減となっています。
ただ、1月~6月の半年間の合計では前年比4.7%増と、5%近く伸びています。

全国的なマイナス現象を見せる中、他府県からの人口の流入が続いている東京都内でも6月は前年同月比6.6%減の6359戸と、3ヵ月連続の減少。
また、東京都内における平成29年第2四半期の貸家の新設住宅着工戸数が前年同月比9.8%減の1万7379戸で、9期ぶりの減少を見せるなど、ここへきて貸家の新設は一つの曲がり角を迎えたようです。




時代の変遷とともに年々大きくなる「管理」の役割
重要な「経営機能」を付加したPM視点


賃貸経営を取り巻く環境は時代とともに変遷します。
そうした中、「管理」の果たす役割が年々大きくなっています。
物件運用の最大化を図る昨今の物件管理の課題などをまとめてみました。

今更ですが、管理の内容が賃貸経営を左右します。
その管理は本来、単に建物、設備等の清掃や点検を指すだけでなく、不動産価値の最大化を図り、物件の価値を高め、単なる建物管理の域を超えて、コンサルティングまでの幅広い領域があるべき仕事となっています。

賃貸管理業務の大きな柱は、
①建物・設備のメンテナンス
②入居募集・契約業務
③クレーム・集金業務
④退去手続き・原状回復業務
と続きますが、近年、こうした4つの業務に加えて、5番目に「物件の高付加価値を図り、収益アップを図る」マネジメントがクローズアップされています。
物件のグレードアップを高めるため、機能、サービスの付加価値を高める経営です。

将来を見込んで、空室対応に手を打つプランニング、計画性が求められているのです。
従来の管理様式一歩踏み込んだスタイルで、「管理機能」に「経営機能」を付加したプロパティーマネジメント(PM)の手法が重要とされています。

社会の急速な変化に備えてマネジメントする管理

プロパティーとは、財産、資産で、賃貸経営ではアパート・マンションの建物、物件を指し、これをマネジメント、つまり経営、管理することで、物件のグレード、機能、サービス等の付加価値を高めて、高入居率を維持し、収益の向上を達成します。

これからの賃貸経営は、PMの手法を考慮せずに成り立たないのではと考えられます。

こうして見てきますと、賃貸経営の基本であり原則は、管理の徹底と充実を図って仲介業務に全力を注ぐという原則の重要性を認識するものです。
時代の変遷に対応するには突き詰めれば管理の充実を図る、ということに尽きるのではないでしょうか。
退去が発生すればただちに入居者募集が始まるのですが、普段の管理が万全であれば、解約、原状回復、募集とちった新しい入居手続きがよりスムーズに行えます。

賃貸経営を取り巻く環境は時代とともに変わっていくのですが、管理を充実していればその対応はかなり違ったものになると思われます。
社会の急速な変化に備えるためにもあらゆることを想定してマネジメントする管理が今後は一段と求められるのではないでしょうか。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
万一に備える「相続税」の手配も
賃貸住宅経営の大切な課題事項



諍いを残さない手配も必要

相続税は死亡後の財産処分の話の一部分にも当たりますから、気が進まないものですが、万一に備えて、諍いの原因を残さない手配も賃貸経営の延長線上にある課題ではないでしょうか。

相続税は、亡くなった方の遺産を相続した時に課税される税金で、相続した現金、預貯金、株式、不動産などの財産から被相続人の借り入れ金などの債務を差し引いた正味の遺産額に対して課税されます。
被相続人が死亡した日の翌日から10ヵ月以内に所轄(被相続人の住所地)の税務署に現金で納めます。

一定の要件を満たせば最長20年の「延期」も可能ですが、利子税が別途かかります。
また現金で納付できない場合、「物納」することができます。

物納については、物納財産の評価基準が3種類に分けられ、不適格財産は取り扱われません。
境界がハッキリしない土地や担保権が設定されている土地、公道に通じない土地等は不適格財産とみなされます。

なお、相続で取得した土地の税金がいくらになるのかの評価方法として、路線価方式と倍率方式があります。
路線価方式は、道路ごとに1平方メートル当たりの路線価が千円単位で定められており、土地の面積をかけると評価額が決まります。

また相続対策に加えて、オーナー様ご自身の「高齢対策」を視野に入れておくことも必要ではないでようか。
万一に備え、公証人を介して「遺言書」を作成したり、「成年後見制度」の活用を図るのが最善の策なのでしょうが、これもなかなか理屈通り、割り切って用意周到というわけにはいかないようです。

ところで、国税庁の平成27年度相続税の調査によりますと、申告漏れ課税価格は3004億円で、実施調査1件当たりで2517万円。
申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等1036億円が最も多く、続いて土地410億円、有価証券364億円の順となっています。




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