2018年6月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2018年6月号エスト賃貸経営新聞

国土交通省から『民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック』公表
負のスパイラルに陥らないために計画修繕がベスト


賃貸経営の課題の一つに、建物全体を補修する「大規模修繕」の取組みがあります。
部屋の設備類を新設したり模様替えするリフォームと違って、規模が大きくなるだけに、予算も膨らみ後手後手となりがちですが、長い目で見ればやはり放っておけません。

国土交通省からこのほど『民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック』が公表されました。
A4・10ページほどの内容ですが、大規模修繕の重要性と対策がコンパクトにまとめられています。

国が賃貸経営に関するアドバイスをするこの計画修繕ガイドブックは、ちょっとユニークです。
平易な表現で極めて分かりやすく、賃貸住宅修繕のポイントをまとめています。

まず最初に、「あなたの賃貸住宅は何歳ですか?」と問いかけ、次のようにメンテナンスの重要性を説明します。
「建物も年をとれば、それに応じたメンテナンスが必要です。例えば、RC造の外壁は一般的に12年目くらいに補修・塗装工事が必要といわれており、2000年代前半に建てられた住宅は、今、まさにその時期を迎えています。放っておくと、人が住めない状態にもなりかねません。メンテナンスには、当然、費用もかかります。安定的な賃貸経営のためにも、大規模修繕に備え、本ガイドブックをご参考に、あらかじめ長期的な計画をつくって、適切なメンテナンスに取り組みましょう」。

そして、「修繕しないと、負のスパイラルに!」陥り、「一般的に築年数が経つと、外観の劣化などにより、周辺の新築物件等と比べた競争力は低下してしまします。これを放置しておくと、家賃収入にも響いてくるでしょう。そうなると、いよいよ大規模な修繕が必要というときに、費用を確保することもできず、一層の老朽化が進み、さらなる競争力の低下・負のスパイラルに陥ってしまい、人が住めない状態にもなりかねません」と警鐘を鳴らします。

計画修繕で好循環を図る

また、気になる修繕費用について、RC造20戸(1LDK~2DK)・RC造10戸(1K)・木造10戸(1LDK~2DK)・木造10戸(1K)の修繕時期、費用のイメージが図解で説明され、参考になります。

ガイドブックはこのほかにも「不具合はいつごろから発生するの?」「負のスパイラルに陥らないための計画修繕」「修繕に欠かせない資金確保」「安全で質の高い住宅ストックを将来世代へ」「計画修繕による好循環」などがまとめられ、最後に「長期修繕計画の作成をはじめ、計画修繕に必要なすべての業務を賃貸人が一人で行うことは大変です。わからない事などがあれば、管理会社や施工業者等にご相談してみましょう」とまとめられています。

この『民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック』は国土交通省のホームページからダウンロードできます。




不動産・賃貸市場最新動向
需要が収束して閑散期を迎えた不動産
慎重な見方の中、プラスへ転じる動き



帝国データバンク(TDB)が発表した、4月調査の「TDB景気動向調査(全国)」結果によると、4月の景気DIは前月比0.6ポイント減の49.8ポイントとなり、2ヵ月ぶりに悪化しました。

国内景気の今後は穏やかな拡大傾向での推移が見込まれる一方で、懸念される貿易摩擦の激化などが景気を下押しするリスクを注意深く見守る必要がある。

業界別の「不動産」については、50.9と前月比2.2ポイント減少し、2ヵ月ぶりに悪化。
不動産代理・仲介は収束して閑散期に入ったほか、不動産物件の高止まりが小規模の売買業者などでマイナスに働いた、としています。

3四半期続いたマイナス見通しからプラス指向に期待感

一方、住宅生産団体連合会が発表した、4月度の「経営者の住宅景況感調査」結果によると、低層賃貸住宅の平成30年度第1四半期(平成30年4~6月)見通しの景況判断指数は、受注戸数がプラス17ポイント、受注金額がプラス13ポイントとなっており、3四半期続いたマイナス見通しからプラスへ転じる、としています。

また、不動産情報サービスのアットホームがこのほど発表した、全国13都道府県の居住用不動産流通市場の景気動向調査「地場の不動産仲介業における景況感調査」(平成30年1~3月期)結果によると、賃貸仲介の業況判断指数が前期比上昇したエリアは東京都下、愛知県、広島県を除く11エリアで、首都圏では調査開始以来最高の49.1。
前年同期より上昇しているのは14エリア中8エリアの過半数で、その反動もあってか、来期については総じて慎重な見方となっています。




ニュースフラッシュ
平成29年度1年間の貸家の新設は前年比4%減
基本的には賃貸経営の人気は衰えていない



相続対策の節税需要が一巡したことから、賃貸住宅の新設は全国的にも弱含みになっています。
国土交通省から毎月公表される貸家の新設着工戸数も直近の3月は、前年比10ヵ月連続減少となっています。

また、平成29年度1年間の貸家の新設戸数は、前年度比4%減の41万戸です。
三大都市圏別で見ても首都圏、近畿圏、中部圏でそれぞれ前年を下回っています。

ただ、前年と比べて減少しているのですが、前年の28年度が前年比11.4%増であったことから、反動としての落ち込みと見られます。
29年度が前年度比4%減といっても、過去10年の実績で見ると、3番目の規模です。

27年の1月に見直された相続税増税が影響した貸家の新設増が27、28年度に集中したものですから、29年度はやや落ち着いた状態となっているのです。

基本的には資産運用ニーズや相続税の節税目的としての賃貸経営の人気は衰えていないので、これからもある一定数の新設はコンスタントに続くと見られます。




国土交通省『家主向けDIY型賃貸借実務の手引き』作成
大規模工事やサブリース物件に対応


賃貸住宅の入居促進の一環として、DIY型賃貸借の普及に取り組んでいる国土交通省はこのほど、貸主、借主双方の理解を深めるため『家主向けDIY型賃貸借実務の手引き』を公表しました。

賃貸住宅の入居の促進を図るため、サービスの多様化が進んでいます。
そうした一環として、「DIY型賃貸住宅」が多様な広がりを見せています。

DIY型賃貸住宅は、賃借人がDIY(日曜大工)によって、入居に際し内装や設備をある一定の範囲内で変更することが可能な賃貸住宅。
貸主がとくに手を加えることもなく、現況で貸すことができて、また借主は自分に合った必要とする設備を入れ替えたり、模様替えができるといった内容です。

国土交通省では早くから、DIY普及の環境整備を図るために、『DIY型賃貸借に関する契約書書式例』やDIY型賃貸借の活用にあたってのガイドブック『DIY型賃貸借のすすめ』を作成してきました。

そしてこのほど、DIY型賃貸借により大規模な工事を行う場合やサブリース物件でDIY型賃貸借を行う場合などの実施方法があることを踏まえ、「DIY型賃貸借に関する契約書式例」を改定するとともに、ガイドブックの『家主向けDIY型賃貸借実務の手引き』を新たに作成したものです。

大規模DIY型やサブリース物件のポイントや留意点を解説

内容は、DIY型賃貸借の概要、DIY型賃貸借契約の事項のポイント、契約書作成のポイント、DIY型賃貸借のQ&A、参考資料などで構成されています。
また、DIY工事が大規模になる場合や、サブリース物件におけるDIY型賃貸借の場合には、一般的な契約に加えて留意する内容が多いため、気を付けるべきポイントや留意点を解説しています。

DIY型賃貸借住宅が広がる弾みとなったのは、一般的には入居者のニーズの多様性と賃貸住宅に長く住みたいといった層が増えていることが背景にあります。
しかし実際のDIYへの取組みとして、全く手がけていない、今後もやる予定はないといった乗り気薄から、機会があればやっていきたい、すでに何年も前から壁紙の貼り替えは自由にやってもらっていると前向きなオーナー様まで、様々な動きがあります。

DIY型の運用時に発生するオーナー様の負担を軽減するために、DIY型賃貸住宅の導入をご検討でしたら、弊社にぜひご相談ください。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
「相続」は財産と物件管理のために専門家の手を借りて早めにまとめるのが最善策


次代に引き継ぐために

賃貸経営と相続対応についての課題を見てきました。

日本国民の4人に1人が65歳以上を占める高齢社会にあって、数十年に及ぶ賃貸経営を次代に引き継ぐためにも、「相続」は正面から取り組むことが必須のようです。

こうした中、万一に備え、公証人を介して「遺言書」を作成する一方、認知症発症後の相続対策となる「成年後見制度」と「家族信託」の活用が広がりを見せています。

成年後見制度とは、「認知症、知的障害、精神障害などの理由で、判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度」です。
不動産や預貯金などの財産を管理し、遺産分割の協議などを法律的に支援する制度で、権利を守る成年後見人が家庭裁判所によって選ばれ、本人を保護、支援します。

遺言と組み合わせて活用するためにも専門性が高い分、弁護士や司法書士の専門家に依頼することが必要となります。

一方、「家族信託」は財産管理の一手法で、信頼できる家族・親族を受託者として財産管理を任せる仕組みです。
平成19年に信託法が改正されて以来、相続や認知症対策としての利用が進んでいます。

家族信託のメリットとして、「後見制度に代わる柔軟な財産管理を実現でき、2次相続以降の資産継承者の指定が可能」(家族信託普及協会)などが挙げられています。
家族信託はまだ広く知られていませんが、認知症発症後の相続対策や空き家対策の取組みとして注目を集めています。

年月の経過とともに起こる体や心の衰え、あるいは認知症の対策を元気なうちに講じておくことは、財産と物件を管理するためにも最早や特別なことではなくなってきました。

相続対応は理屈では進まない側面もありますが、専門家の手を借りて早めにまとめておくのが最善のようです。




ちょっと一服
とにかく建物に湿気、雨漏りは大敵
雨樋など早め早めに対応してください



景気の「気」は気分や気持ちの気と同じく、ちょっとした現象で上下左右に振れるものですから、公表される景気の動向や経済指標も微妙な言い回しが多く見られます。

5月10日に内閣府から公表された『景気ウォッチャー調査』では、「緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、人手不足、コストの上昇等に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待が見られる」とまとめられています。

再来年開催の東京オリンピック・パラリンピックの経済効果もすでに頂点といわれ、今後、景気の熱を冷やさないためにも、2025年の大阪万博誘致や消費税増税に関心が集まっています。

ところで、6月といえば梅雨。
毎年のことですが、これから7月半ばにかけて鬱陶しい日が続きます。
近年はジメジメ降る長雨のほかに、突発的な一点集中型のゲリラ豪雨も加わって気が許せません

とにかく建物に湿気、雨漏りは大敵ですから、物件を傷めない為にも雨樋、雨戸、住宅の回りの水路等の点検は早めに対応してください。




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