2018年9月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2018年9月号エスト賃貸経営新聞

やや上向き傾向の賃貸市場、多様なコンセプト住宅が開発される
加速度的に進行する賃貸経営のIT・オンライン化


9月を迎え、今年も早や後半期となりました。
賃貸住宅ビジネスにおいては秋の商戦、その後に続く来春にかけての動きを見せ始めています。
時代とともに社会が大きく変わる中、賃貸住宅市場を巡る主な話題を探ってみました。

賃貸住宅市場の景況感は、やはり成約数の伸びや成約賃料で評価されます。
また、反響数、問い合わせ数、来客数によって市場の傾向を判断するのですが、現在は景気改善を受けて、反響・来客数・成約数は総体的に上向き傾向にあります。

賃貸市場は地域性、物件特有の傾向が強いだけに、市場全体をなべて平均化するのは難しいのですが、大きな変化は見られない、といったところです。
 
不動産情報サービスのアットホームがこのほど発表した、全国13都道府県の居住用不動産流通市場の景気動向調査「地場の不動産仲介業における景況感調査」(平成30年4~6月期)結果によると、首都圏・近畿圏における賃貸仲介の業況DIは、首都圏では前期比マイナス1.7ポイントと小幅に低下、近畿圏は前期比マイナス0.1ポイントとのほぼ横ばい。
前年同期と比べると首都圏ではプラス4.3ポイント、近畿圏ではプラス0.8ポイント高くなっています。

そして、物件が充足する一方、賃貸住宅の多様化と個性化が急速に進んでいることに目を見張ります。
先日も建物内に映画館が併設された賃貸住宅タイプの共同住宅がオープンすると聞いて驚いたものです。
さらに、入居者の関心が高い防犯設備やペット共生にIoT(物のインターネット)を取り入れた製品が、相次いで商品化されています。
集客を図るためのコンセプトを突き詰めると、住まいと映画館、あるいはIoTをセットにしてしまうアイデアとなっているようです。

賃貸住宅への急速な浸透が進むIT化が賃貸住宅の構造はもとより、経営のあり方をも大きく変えようとしています。

今日、賃貸経営はIT(情報技術)を活用して、物件の紹介から下見の案内、契約に至る重説、そして鍵の受け渡し、取り換えもIT・オンライン化で完結する時代を迎えています。

『真に人に優しい不動産の実現』
賃貸住宅にも影響を投げかける


ところで、多様な働き方を選択できる社会実現を目指す「働き方改革関連法」が成立して、国を挙げてこれまでにない働き方の推進を打ち出しています。
こうした実態を受けて国土交通省は、日本社会の変化とあるべき方向性として、2030年を目途とする今後の不動産のあり方、『真に人に優しい不動産の実現』を公表しました(下記「情報パック」参照)。
これからの不動産のあり方の基本を示したもので、賃貸住宅にも影響を投げかけようとしています。

さらに、一億総活躍社会実現の「人生100年時代」を前に、「人生100年時代の賃貸経営」を視野に入れることも現実的となっています。




賃貸住宅・不動産市場の現況
7月の景気DIは4ヵ月ぶりに改善
6月の貸家の新設、13ヵ月連続の減少



賃貸住宅及び不動産市場の現況を各社からの発表データが、次の通り捉えています。

●国土交通省が発表した6月分の新設住宅着工戸数によると、貸家の新設着工は、前年同月比3%減の3万4844戸で、13ヵ月連続の減少となりました。
公的資金による貸家新設は増加したが、民間資金による貸家が減少したため、貸家全体で減少となったもの。
なお、今年1~6月の合計は、前年比6.3%減の18万8835戸。

●帝国データバンク(TDB)の7月調査の「TDB景気動向調査(全国)」結果によると、7月の景気DIは前月比0.5ポイント増加の49.5と4ヵ月ぶりに改善した。
国内景気は、集中豪雨が被災地を中心に企業活動の停滞を招いた一方、猛暑や賞与が消費を刺激して4ヵ月ぶりに改善、国内景気は足踏み状態。

●全国宅地建物取引業協会連合会はこのほど、2018年7月期の「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書(不動産市況DI調査)」を公表しました。
それによると、居住用賃貸物件の賃料、成約件数、空室率の3ヵ月後の予測に対して、全国の賃料で横ばいが71.1%、成約件数で横ばいが63.0%、空室率では横ばいが56.3%と大きく変わらないと見ています。

●リクルート住まいカンパニーが発表した「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018関東版番外編~街のイメージ~」で、東京オリンピックの時に人気が出ていそうな街(駅)ランキングは、1位が「豊洲」。
このほか、「月島」「勝どき」「新木場」といった東京オリンピック関連施設の建設予定地である湾岸エリアの街と、「東京」「品川」「澁谷」「新宿」「銀座」「浅草」といった観光客にも人気の高い街が、トップ10にランクインしています。




ニュースフラッシュ
3大都市圏の都府県で外国人人口増
東京都新宿区では総人口の9.2%占める



訪日外国人とともに、在留外国人が目立って増えています。
総務省が8月に公表した平成27年国勢調査結果をもとにした外国人人口の地域分布によると、日本に住んでいる外国人人口は約175万人で、総人口に占める割合は1.4%となり、平成22年に比べ10万4000人、6.3%増加しています。

都道府県別に見ると、やはり総人口の多い首都圏を始めとする3大都市圏の都府県で外国人人口が多く、各地域の総人口に占める外国人の割合が年々大きくなっています。

27年国勢調査の外国人人口を市区町村別に見ると、外国人人口2万人以上の地域が6市区あり、最も多いのが東京都新宿区の3万506人で、総人口の9.2%になります。
次いで江戸川区の2万3997人、豊島区の2万2279人、足立区の2万1563人、江東区の2万1373人と5番目までが東京都の特別区の区域。
6番目が埼玉県の川口市2万527人。

また、全国で最も外国人人口の多い新宿区の中でも外国人の地域分布に濃淡が見られます。




付加価値を高め、差別化に有効な「リフォーム」
成功するリフォーム3つのポイント


リフォームは賃貸経営の中で、必ず一度は直面する課題です。
建物が古くなり空室が発生してそれがいつまでも続くと、打開策にリフォームが視野に入ってきます。
ではどうすればいいのでしょうか。

賃貸住宅を再生する方法としては、限られた予算でリフォームするのが一般的です。
また、修繕・修復・改築をベースとしたリフォームではなく、建物内容をガラっと変えてしまうリノベーションも人気を呼んでいます。
さらに、入居者がDIY(日曜大工)によって、内装や設備をある一定の範囲内で変更するDIY型賃貸住宅も多様な広がりを見せています。

入居者の入退去が続く賃貸住宅は、どうしても傷みがちとなり、建物の美観、性能を落とさないためにも小まめな補修・修理は欠かせません。
建物も20年を過ぎると修理の頻度が高まり、費用がかさんで収益を圧迫することになります。

そうしたことから考えるのがリフォームです。
古くなった設備を取り替えるタイミングを見計らって水回りの設備を一新すると、建物のイメージは一変して契約の促進に効果的なことはよく知られています。
そこでリフォームをやるにしてもどこまで内容を広げて実行するかですが、もし建物が30年を経過していたら思い切った方法をとるのが最善ではないでしょうか。

事前のプランニングと専門業者に任せること

リフォームをするポイントは入居者のニーズを的確に応えることです。
その一つは、耐震化を図ること。
新耐震基準に満たない建物ならリフォームの際、耐震工事をきっちり施します。
二番目は防犯設備の充実です。

そして三番目が最新のIoT機器・AIサービスの導入。
IoTは物のインターネットと呼ばれ、物がインターネットのようにつながる仕組みで、防犯においてもドア・窓センサー・スマートロックの使用には中心的な役割を果たします。
この三つのカテゴリーを整備することで、付加価値を高め、物件の差別化が達成されます。

リフォームの施工会社ですが、現在ある建物の一部を活用するリフォームは、配管処理や電気工事などリフォーム特有の作業に慣れていないと、とんでもない間違いが生じることになります。
リフォーム成功のコツは事前のプランニングとリフォームに精通した専門業者に任せることがポイントです。
リフォームをお考えの場合は、弊社にご相談ください。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
高齢者の居住の安定確保を目指した
一代限りの契約「終身建物賃貸借制度」



終身にわたり居住できる仕組み

「終身建物賃貸借制度」をごぞんじですか。
平成13年10月に施行された「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、「高齢者単身・夫婦世帯等が終身にわたり安心して賃貸住宅に居住することができる仕組みとして、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する相続のない一代限りの借家契約を結ぶことができる制度」(国土交通省)です。

高齢者の入居が敬遠されやすいことから、バリアフリー化された賃貸住宅に高齢者が終身にわたり居住できる仕組みで、賃貸住宅市場の整備を通じて高齢者の居住の安定を確保することを目指しています。

また昨年10月には、高齢者、低額所得者、子育て世代、障害者、被災者などの住宅の確保にとくに配慮を要する人達(住宅確保要配慮者)の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度の「新住宅セーフティネット法」が施行されました。
これは単身の高齢者、生活保護受給者、高齢者のみの世帯、一人親世帯に対して貸主の入居拒否感が強いことに対応したものです。

賃貸住宅の場合、一度入居が始まると入居者は義務とともに権利が生じることから、一般的に住宅確保要配慮者に対して慎重な姿勢が見られます。
慎重さの背景には家賃滞納、孤独死、子どもの事故、騒音等のトラブルなどがあります。
一方、国としては安心して暮らせる住宅の確保に努め、社会の安定を図るためにも住宅セーフティネット機能の強化を重要な政策課題としています。

国土交通省によると、単身高齢者について今後10年間で100万世帯の増加が見込まれ、このうち賃貸住宅入居者は22万人と見られています。
それだけに高齢者を受け入れる準備にとくに力を入れています。

なお、「終身建物賃貸借標準契約書」が2020年4月1日に予定されている民法改正法に対応して、改定されました。




ちょっと一服
時代の動きのテンポが速い中、入居者が欲するものを取り入れる


盆明け、8月後半以降、暑さは幾分ましになったとはいえばましなんですが、厳しい残暑となっています。
命に危険を及ぼすといわれる暑さ、もう少しの我慢です。
水分補給や十分な休養など、生活を工夫して上手に付き合って実りの秋を迎えたいものです。

最新の賃貸経営に関する様々な情報を掲載しました。

建物の傷みや劣化など、築古と空室発生は背中合わせのところがあります。
とにかく建物・設備は時間の経過とともに色褪せ、壊れたりするもので、賃貸経営においてもメンテナンスは気を配るところです。

それだけに、賃貸経営を長い目で見た場合、思い切ったリフォームも選択肢と思われます。
それも単に「更新」するだけではなく、従来にない「機能」を付加させてイメージ一新を図ることで、競争力をつけることがポイントになっています。

とにかく時代の動きのテンポは速く、アッという間に先に進んでいきます。
流行を追うのではなく、入居者が欲するものを手際よく取り入れたいものです。




「2030年を目途とする今後の不動産のあり方」
12年先に向けた住宅の役割、機能を提案
賃貸住宅においてもアイテムを先取り



「働き方改革」が話題を集めています。
少子高齢社会が進み、その上、人手不足が浮上して、労働のあり方を見直そうとの気運からクローズアップされているものです。

そして国土交通省は「働き方改革」の一環としてこのほど、「2030年を目途とする今後の不動産のあり方」を公表しました。

取りまとめでは、人々が働き、暮らす上で、時間的・場所的制約から解放され、活動し、休息する人間の1日24時間を充実させる『真に人に優しい不動産の実現』を目指して、「オフィス」「住まい」「まち」それぞれが発展していくことを提言しています。

また取りまとめは、社会情勢の変化に対応した日本の不動産市場の発展を確保していくためには、社会全体として、これからの日本社会のあるべき方向性を認識し、その実現を支える不動産の形成に努めていくことが重要、としています。

これからの社会のニーズを掲げる

2030年頃を見据えたこれからの不動産像の中で、「住まい」に対して、次の項目を挙げています。
IoT住宅で空調等を最適化、テレワークのための通信環境、働く「場」としての機能確保(書斎、通信、セキュリティ等)、マンションの共有部をリノベーションしたワークスペース、スタディールーム、リビングにおけるワークスペースの設置(リビ充)、育住近接(共同住宅内への保育所設置等)、宅配ポスト、電気自動車への対応(充電設備)など。

およそこれから12~3年先に向け、住宅の役割や求める機能をまとめたものです。
IoTの課長、宅配受取ポスト、テレワークのための環境づくり等、すでに実用化が進み、これからも社会が求める設備としてさらに機能アップが予測されています。

賃貸住宅においても、こうしたアイテムを検討、先取りしていくことが求められているようです。




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