2018年10月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2018年10月号エスト賃貸経営新聞

中長期の外国人在留者数が増える中、外国人向け住宅需要も膨らむ
外国人ニーズと本腰を据えて取り組む時期を迎える


外国人の訪日者数、中長期滞在者の増加が日本経済を押し上げる要因となり、同時に賃貸住宅市場にも好影響を及ぼしています。
図らずも9月に発生した台風21号による関西国際空港の機能不全や北海道の地震がそれを証明する結果となっています。

賃貸市場では、「外国人向け賃貸物件」として、外国人に的を絞った物件のPRが一時より見られるようになりましたが、依然、消極的な姿勢が見られます。

少子高齢社会の定着、日本経済の活性化とグローバル化の進行によって人の動きが根本的に変わろうとしている今日、賃貸経営においても外国人ニーズと本腰を据えて取り組む時期を迎えているようです。

今日、各方面で人手不足が喫緊の課題となっています。
作業現場の人手不足は深刻なことから、外国人労働力が大きな役割を果たしており、海外からの労働者の流入が相次いでいます。
こうしたことを背景に外国人入国者数は平成29年には約2743万人と、前年比約421万人増加。
過去最高となっています。

また、仕事や学業のための中長期の在留者数は、平成29年末には約256万人と、過去最高です。
昭和60年末が85万人ですから、30年ほどで3倍の規模。
そして、わが国における外国人労働者数は約128万人で、10年前の平成20年の約49万人と比べ、2.6倍となっています。

観光ではなく、労働を目的に来日する外国人にとってすぐ必要となるのが住居です。
条件に見合った賃貸住宅を探しはじめますが、現状では思い通りに入居できないようです。

ところで、外国人の入居審査に必要な書類としては、本人確認のためのパスポート、在留カードや勤務先・学校を確認するものとしては勤務証明書、在学証明書、勤労資格証明書、資格外活動許可書があります。
また、収入を確認するものとして源泉徴収票、給与明細書、納税証明書、前年度の確定申告の写し、給与支払いの証明書、銀行の送金証明書、奨学金支給証明書、預貯金証明(通帳の写し)などが用いられています。

身元確認や収入証明は書類等でチェック


さらに連帯保証人については、適正な連帯保証人が見つからない場合、家賃債務保証サービスを利用することになります。
言葉や生活習慣が違うため、ともすれば一歩引きがちですが、身元確認や収入証明には以上の書類等でチェックできますので、過分に案じることはないと思われます。

また、外国人の住居探しに積極的な姿勢の国土交通省は、外国人の賃貸住宅への円滑な入居を図るため、実務対応マニュアル『外国人の民間賃貸住宅入居者円滑化ガイドライン』や『不動産事業者のための国際対応実務マニュアル』を作成しています。
建物の契約に関して、参考になる基礎的な資料としてまとめられており、外国人との取引の不安感解消に役立つ内容となっています。




「2017年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」
部屋探しの決め手はやはり「家賃」
物件の見学数は平均で2.9件



賃貸物件を契約した人を対象に、今年5月に実施した「2017年度賃貸契約者動向調査(首都圏)」の結果がリクルート住まいカンパニーからこのほど発表されました。

首都圏における調査データですが、部屋を探すお客様の傾向が読み取れます。
その内容は全国的に共通したものが見られます。
主だったポイントを紹介します。

まず、不動産会社の店舗への訪問数は平均1.6店舗で、長期的に見ると訪問店舗数は減少の傾向にあります。
物件の見学数は平均2.9件と過去最少。
見学数の減少が続いています。
そして部屋探しにおいて、最も決め手となるのはやはり「家賃」で、その一方、最もあきらめた人が多いのは「築年数」。

次に引っ越す際に欲しい設備は、昨年同様に「エアコン」「独立洗面台」「TVモニター付きインターフォン」が上位を占め、「24時間出せるゴミ置き場」「浴室乾燥機」が昨年より増加しています。

家賃が上がっても欲しい設備の1位は「追い焚き機能付きの風呂」。
また、家賃が上がってよいと考える人で、かつ家賃上昇許容額が高い設備の1位は「エアコン」。
プラスしてもいい家賃許容額は、1800円となっています。

満足度の高い設備では、「24時間出せるゴミ置き場」が1位。
3位の「宅配ボックス」と合わせて利便性の高い設備が高い傾向。
2位の「遮音性の高い窓」と性能系の設備も上位にあります。
ファミリー世帯には「宅配ボックス」の満足度が高くなっています。

なお、DIY・カスタマイズ実施経験率は3年連続上昇し、過去最高の18.9%に。

前回調査から、2人世帯のDIY・カスタマイズ実施経験率増加が著しく、13ポイント増加しています。




ニュースフラッシュ
主要都市の地価、緩やかな上昇基調が継続
台風、地震がインバウンド需要に影を落とす



全国の地価動向とともに不動産の市場動向を調査した「地価LOOKレポート」が、国土交通省から3ヵ月に一度、公表されています。

4月1日~7月1日分によりますと、主要都市の地価は全体として緩やかな上昇基調が継続し、上昇地区は前期91地区から今期95地区に。
上昇地区数の割合が2期連続して9割を上回り、0~3%の緩やかな上昇の地区が大半、とされています。

全国で比較的高い上昇を示したのは、札幌市の駅前通、東京都の渋谷、表参道、横浜市の横浜駅西口、名古屋市の太閤口、伏見、金山、大阪市の心斎橋、なんば、福島、神戸市の三宮駅前、福岡市の博多駅周辺、熊本市の下通周辺。

こうした上昇基調の要因として、訪日観光客による消費・宿泊需要が旺盛、利便性の高い地域等で堅調なマンション需要を背景に投資が引き続き堅調なことなどが挙げられます。
ただ、台風21号、北海道胆振東武地震による被害がインバウンド需要に影を落としていることから、今年後半以降に何らかの影響が懸念されています。




基準の緩和により賃貸住宅での積極活用進める
法律・規則を改正して活用の活性化図る


賃貸経営に関連する政策が9月に入って、国土交通省から相次いで公表されました。
社会情勢に見合った高齢者対策や建築基準法の一部を改正したものです。

前月号で紹介した高齢者が死亡するまで賃貸住宅に住み続けられる「終身建物賃貸借事業」を活用しやすくするため、省令改正等が行われました。
公布・施行は9月10日で、事業認可申請の添付書類の削減や既存の建物を活用する場合のバリアフリー基準の緩和を行うものです。

終身建物賃貸借制度は、賃貸人にとっては賃借権が相続人に相続されないため、借家契約の長期化を避けることができる一方、賃借人にとっては前払い金の保全措置が講じられ、同居していた高齢者は継続居住が可能等の特徴を持っています。

平成28年度末時点で193事業者が9733戸を提供していますが、大半がサービス付き高齢者向け住宅で、申請者の事務的な負担が大きといった課題があって、一般の賃貸住宅での活用が進んでいないのが現状。

そこで、高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則を改正し、添付書類の削減による申請手続きの簡素化、既存の建物を活用する場合のバリアフリー基準の緩和、シェアハウス型住宅の基準の追加等を行いました。

宅配ボックスの設置は容積率規制の対象外に


国土交通省ではこの改正により、広く一般の賃貸住宅における終身建物賃貸借事業の活用が図られるとともに、セーフティネット住宅にも登録する物件が増えることを期待しています。

また、宅配ボックスを設置しやすくするために、建物用途や設置場所によらず、宅配ボックス設置部分を一定の範囲内で容積率規制の対象外とします。
オフィスや商業施設など多様な用途の建築物に設置しやすくするため、宅配ボックス設置部分を一定の範囲内で容積率規制の対象外としたものです。
宅配ボックス設置部分のうち、共同住宅の共用廊下と一体となった部分については、既に容積率規制の対象外としています。

さらに、建築基準法の一部を改正する法律が、9月25日に施行されます。
主な内容は、袋路状道路にのみ接する大規模な長屋等の建築物について、条例により共同住宅と同様に接道規制を付加することを可能とする、老人ホーム等について、共同住宅と同様に共用の廊下・階段の床面積を容積率の算定対象外とする、など。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
高齢者単身世帯の22%が賃貸住宅に居住
市場においても高齢者の存在感が高まる



特筆される居住の長さ

「新住宅セーフティネット法」がスタートして1年が経ち、住宅の確保に配慮を要する方々への環境整備が国の主導で急ピッチに進んでいます。
住宅確保要配慮者の中には当然、高齢者が含まれています。
高齢者の入居について取り上げます。

高齢者の入居で特筆されるのは、転宅の頻度の低さ。
学生、単身者、ファミリーに比べて居住が長く、日々の生活態度も静かで、温厚なところです。
夜逃げや家賃滞納といった不祥事、騒動があまり起きていません。
その一方、不安要因といえば、単身者の場合には病気で寝込んで、最悪孤独死に直面することです。

ただ、ネガティブに考えるとキリがなく、年齢に関係なく事件・事故は起きるものですから、最悪のケースの事件・事故に対応しては保険等の加入でかなりの部分がカバーされます。

ところで、わが国の高齢化が世界有数の規模であることはよく知られています。
総人口に占める65歳以上人口の割合、高齢化率は28%を超え、さらに65歳以上の一人暮らし高齢者の増加が目立っています。

一方、わが国の全世帯数のうち28%の世帯が民営借家、つまり賃貸住宅で生活されています。
全世帯のうち65歳以上の高齢者のいる世帯の10.7%が賃貸住宅に住まれ、高齢者単身世帯の22%が賃貸住宅に居住されています。

高齢単身者、高齢者夫婦の多くは賃貸住宅が生活拠点となっています。
そのため、国としても賃貸住宅関連の環境整備に力を入れています。

社会の高齢化の進行とともに、賃貸市場においても高齢者の存在感が高まっています。

オーナー様の多くはこうした実情をよくご理解されていることと思います。

その上で、賃貸経営においても高齢者対応の前向きな取り組みが必要な時期に直面しているのではないか、とご提案する次第です。




ちょっと一服
15回目の「住宅・土地統計調査」
平成30年分を10月1日から実施



地震、台風、集中豪雨による自然災害が各地で起きています。
オーナー・読者の皆様にはお変わりありませんか。
被災地の皆様には、心よりお見舞い申し上げます。

9月も後半、10月の声を聞きますと、さすがに夏場に殺人的といわれた暑さも影を潜め、衣服を重ねる日々を迎えています。

テレビのニュースで、本来頑丈なはずの重量物のトラックが暴風によっていとも簡単に横転する光景を見ていますと、自然の脅威とともに、運輸を支えるために悪天候の中、走行するドライバーのプロ意識を垣間見た思いです。

総務省が昭和23年から5年ごとに行っている「住宅・土地統計調査」の平成30年分がこの10月1日を期日に実施されます。
全国約370万世帯を対象とするわが国でも最大の標本調査で、住宅政策立案の根幹をなしています。
今回は節目の15回目の調査で、調査結果の速報が来年4月に公表されるようですが、今から全国の空き家数の増加傾向や世帯数、住宅数の実態など、調査内容が気になるところです。



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