2018年12月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2018年12月号エスト賃貸経営新聞

賃貸住宅市場における今年一年の主だった傾向と注目のトレンド
住宅確保要配慮者と外国人対応が一気に表面化


今年も残り1ヵ月。
皆様にとって今年はどのような年でしたか。
地震、台風と相次ぐ自然災害に脅かされたのが未だに記憶に新しく、来年はこともなく安泰であってほしいと願う次第です。
賃貸市場の今年の1年の主だった傾向と注目されたトレンドをまとめてみました。

今年の賃貸住宅のトレンドとして目を引いたのは、AI(人工知能)、IoT(物のインターネット)サービスを応用したユニークなアパート・マンションが相次いで開発されたことです。
賃貸住宅への急速な浸透が進むIT(情報技術)化が賃貸住宅の構造はもとより、経営のあり方をも大きく変えようとしています。
賃貸経営はITを活用して、物件の紹介から下見の案内、契約に至る重説、そして鍵の受け渡し、取り換えもIT・オンライン化で完結する時代を迎えています。

今年は人生100年時代が話題となりました。
一億総活躍社会実現の「人生100年時代構想」同様、「人生100年時代の賃貸経営」が現実となってきました。
従来の30~40年を区切りとするのではなく、これからは50~70、80年も視野に入れ、長期にわたる経営スタンスの確立が求められるということです。

賃貸住宅の需要と密接な関係にある「世帯数」の将来を予測する2018年推計の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」が、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所から公表されました。
将来の賃貸市場ニーズに直結する世帯総数は、2015年の5333万世帯から2023年まで増加をつづけ、5419万世帯でピークを迎え、その後は減少に転じ、2040年の一般世帯総数は5076万世帯まで減る、としています。
全国推計の統計で、地域レベルの賃貸市場とは同一に見られませんが、いよいよ世帯数が減り始めるのが気になるところです。


外国人労働者受け入れ拡大が賃貸市場にも影響投げかける

高齢社会が定着したことから、賃貸住宅においても国を挙げての高齢者対応の政策が打ち出されました。
高齢者、定額所得者、子育て世帯、障害者などの住宅の確保にとくに配慮を要する住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の運用に国が積極姿勢を見せているものです。

また、高齢者同様、外国人対応が一機に表面化しています。
賃貸市場では「外国人向け賃貸物件」として、外国人に的を絞った物件が数多く見られます。
外国人労働者受け入れ拡大が進み、日本経済の活性化とグローバル化の進行によって人の動きが根本的に変わろうとしている今日、賃貸経営においても外国人ニーズに本腰を据えて取り組む時期を迎えているようです。

ところで6月より施行された「住宅宿泊事業法」(民泊新法)によって、民泊の本格的な運用が始まりました。
多様化する宿泊ニーズに対応するため、賃貸住宅の空き部屋を宿泊施設として有効活用できると、期待感が先行しましたが、懸案も多く、半年を経過してまだマーケットは落ち着くに至っていません。

主だった事項を取り上げましたが、来年も継続する課題となっています。




最新賃貸住宅市場の動向
民間資金の慎重化と絞り込みで、減少傾向が続く賃貸住宅の新設


賃貸市場の動向を判断する指標の一つに、賃貸住宅の新設があります。
新設が多いと市場が賑わい、少ないと逆に鎮静していると見られます。
賃貸住宅の場合、電気製品や工業品と違い、市場ニーズに反して建設されても売り切るために値引きしたりする訳にいかず、供給過剰となって市場のメカニズムを崩してしまいかねません。

今年の貸家の新設は、7月まで14カ月連続で前年実績を下回り、8月に入って1年3ヵ月ぶりに増加しました。
しかし9月には一転して再び減少となっています。
今年1~9月の合計数量でも前年比約5%近く減少しています。
公的資金による建設は増加しているのですが、民間資金が絞り込まれているため、総量では減少となっているものです。
日本銀行の7月の地域経済報告で取り上げられているように、「相続税の節税対応のための貸家建設需要は一巡し、減少傾向が続いている」「貸家の着工は、金融機関の慎重な貸出態度が継続していることなどもあって、郊外を中心に減少している」現象が各地で見られています。


依然根強い賃貸経営への投資意欲

また、帝国データバンクが発表した10月調査の「TDB景気動向調査(全国)」結果によると、「不動産DIは前月比1.4ポイント減の49.3となり、2ヵ月連続で悪化。金融機関による個人向けや投資用不動産のローン貸出姿勢が慎重化していることが響いた」と捉えています。
ただ、貸家は市場において新築に人気が集まり、賃貸経営への投資意欲も根強いことや消費増税を控えているので、これからの駆け込み需要がどこまで膨らむか注目されるところです。




ニュースフラッシュ
土地の所有者の探索が合理化されます
所有者が分からない土地の増加に対応



所有者が誰なのか分からない土地は、所有者の特定等に多くのコストを要するため、公共事業の推進や土地の活用を図る様々なところで、円滑な事業実施の大きな支障となっています。

こうした課題に対応するため、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が今年6月に成立し、11月9日に公布、11月15日に一部が施行されました。
これで土地の所有者の探索が合理化される環境が整備されたと見られています。

人口減少・高齢化の進展に伴う土地利用ニーズの低下や、地方から都市等への人口移動を背景とした土地の所有者意識の希薄化等によって、所有者が分からない土地が全国的に増加しています。
今後も、相続機会の増加に伴って増加の一途をたどることが見込まれています。

同法施行令では、土地所有者の探索の方法について、調査の対象となる公的書類や情報提供を求める相手方を明確化し、所有者かどうかの確認は書面の送付によることを基本とするなど、所有者探索を合理化する方針。




消費税率10%引上げと「賃貸経営」への影響
消費税増税に備える投資を計画的に


二度にわたって延期された消費税率10%の来年10月の実施でほぼ決まりました。
今後、賃貸経営にどのような影響が及び、また増税に備えてどのような対策をすれないいのでしょうか。

消費税は商品を買ったり、サービスを受けた時にかかってくる間接税です。
賃貸関連では住宅家賃(共益費含む)、損害保険料、借入金利息が非課税で、駐車場賃料、修繕費には課税されます。
同じ家賃でも貸事務所、貸店舗の家賃は課税対象。
仮に土地を購入して賃貸住宅を建てる場合、土地価格は非課税ですが、建築費は課税対象です。

賃貸経営のメインの収入の家賃には消費税がかからないので、増税分の出費は経営全体から見れば持ち出しとなります。
電球や蛍光灯の安価な備品の出費からリフォーム、大規模修繕に要する数百万~数千万円の工事代まで増税分の負担が新たにかかってきます。

そこで、消費税増税に備える対応策として、消耗品類の備品の在庫をチェックして事前に買い揃えておくことや、やはり大きな出費が伴うリフォーム、外構工事、屋根・外壁等の塗装工事を前倒しでできるだけやっておくことをお勧めします。
とくにリフォームやリノベーションのような大規模になる工事、あるいは建て替えを検討されている場合、早めに計画、着手することです。

賃貸経営のオーナーは事業者であると同時に、事業に関連した物品を購入する消費者の立場ですから、これからしばらく税負担となる経済環境を迎え、賃貸経営の難しい舵取りが必要となってきます。

税金との関わりが強い賃貸経営ですから、税制の動向には目が離せませんが、来年10月にかけては増税に備え、賃貸経営の足腰を強化する準備と捉えればいかがでしょう。

家賃に消費税がかからないといいましても、更新料、礼金、共益費、駐車場代、固定資産税、損害保険料の取り扱い、1000万円の免税業者扱いのほか、今回は軽減税率制度の導入、緩和措置など、煩雑な消費税の税務処理があります。
お困りのことがあればご相談ください。

ところで、消費税率10%の引上げは来年10月の実施が見込まれていますが、まだ本決まりではないという見方もあるようです。
最後まで気を抜けません。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
一年の締めくくりに見栄え良く清掃を
物件が大きく動く初春の繁忙期に備える



気持ちよく新年を迎える

年明け後に始まる初春の繁忙期に備えるために、これから年末にかけてやっておきたいことをまとめてみます。
まだ1ヵ月ありますので計画的に取り組んでください。

12月は仕事納めとなります。
20日も過ぎますと、急ぎや納期の迫った取り決め以外は思い通りにことが進みません。
修理や補修、傷んだ備品の交換、外装の塗装や廊下・共用スペースなどの塗り替えなどは早い目に手配して、気持ちよく新年を迎えたいと思います。

十分に行き届いた清掃が賃貸住宅の価値を高め、同時に入居促進に役立つことはよく理解されています。
それだけに1年の締めくくりに、清掃はキッチリやっておきたいものです。
とくに玄関周辺のゴミや溜まったチラシなどが放置されていたり、ゴミ置き場がひどく汚れていれば、建物や管理の評価に直結します。

やはり見栄えよくするためにも、敷地の内、外で気になるものは年末にこそ片付けたいと思います。
冬場の雑草は意外に目立つものですから、目につきましたらスコップなどで抜いておきます。

なお、清掃関係について管理会社が「管理」を担当している場合、定期的に清掃作業が行われますが、管理形態によってオーナー様のご負担の内容が違ってきます。

それと、連絡に使用する携帯電話やご自宅のFAXなども、もし買い替えの予定があれば早めに購入して、データ等を整備し、使い慣れておいてください。

繁忙期に入ると物件を紹介する段にお客様との話が煮詰まって、空室確認や条件の打ち合わせ、部屋の案内、鍵の受け渡しに急な連絡を差し上げることが出てきますので、携帯電話等のご準備をお願いします。

年明けから春先にかけては物件が大きく動きます。
この機を生かして空室がある場合は一気に埋めたいものです。




ちょっと一服
中長期の外国人在留者数が増える中、さらに外国人向け住宅需要が膨らむ


外国人労働者の受入れ準備が具体化してきました。
新聞報道によりますと、来年4月から向こう5年間で26万~34万人の受け入れを想定しているようです。

すでにわが国には今年の6月末現在で約264万人の在留外国人が生活しています。
これは総人口の約2%程度で、東京都の場合、20歳代の10人に1人が外国人といいます。

在留外国人数が最も多いのが東京都の55万5千人で全体の21%を占め、次いで愛知県の25万1千人、大阪府の23万3千人、神奈川県の21万1千人、埼玉県の17万3千人で、この1都1府3県で全体の54%と過半数を占めています。

日本が英国に次いで世界で4番目の移民国といわれる実情が、こうした人口の統計に表れています。

中長期の外国人在留者数が増える中、さらに外国人向け住宅需要が膨らむようです。

少し早いですが、今年もお世話になり、ありがとうございました。
また、この1年間、本誌をご愛読いただきありがとうございます。
来年も今年にもまして、ご愛顧をお願いいたします。




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