2019年3月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2019年3月号エスト賃貸経営新聞

賃貸住宅の多様化が急速に進み、鉄道会社の進出が加速化
「賃貸派」が約20%と平成25年以降最も高い結果


弥生三月、これから日ごとに春めいて、各地から桜情報が届きます。
賃貸住宅市場も引越しのシーズン真っ只中、賑わいを見せています。
一方で時代の変化の中、様々な問題も浮上しています。
そこで、賃貸市場を取り巻くここ1ヵ月の話題をまとめてみました。

国土交通省の観光庁は、昨年9月末時点における民泊物件の適法性の確認結果を発表しました。
住宅宿泊仲介業者・旅行業者55社の取り扱い件数の合計は前回から1万6666件増えて、延べ4万1604件。
このうち「違法認定あり・削除対象」と「適法性の確認不可・再報告対象」を合わせた6585件については適法と確認できていません。
合計件数に対する割合は、前回と比べて約4ポイント改善の約16%となっています。

全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)が実施した住宅の居住志向及び購買等に関するアンケート調査結果によりますと、「賃貸派」は約20%で、過去6年で最も高い結果となっています(詳細2面参照)。

不動産情報サービスのアットホームが発表した「地場の不動産仲介業における景況感調査」(平成30年10~12月期)結果によりますと、今期の賃貸仲介の業況DIは、前年同期比で首都圏がプラス2.2ポイント、近畿圏がプラス4.2ポイント上昇し、近畿圏は過去最高値を更新。
見通しは両エリアとも上向きで、近畿圏の見通しDIは50を超えました。

大和ハウス工業は、2・3階建て賃貸住宅3商品に家庭用リチウムイオン蓄電池を標準搭載する、と発表しました。
近年、地震や風水害などの自然災害が多発し、それに伴い停電が発生するなど家庭での電気の備えが見直される中、屋内壁掛蓄電システムを標準搭載するもの。
賃貸住宅の多様化と
ともに、性能アップが急速に進んでいます。

海外情勢に対する懸念の一方、改元や大型連休への期待感

東日本旅客鉄道(JR東日本)は、グループ会社のジェイアール東日本都市開発と連携し、「提案型賃貸住宅」の推進のため、隣接する旧社宅・旧寮をリノベーションして、ファミリー向け賃貸住宅、シェア型賃貸住宅を中心とした暮らしを提案し、2026年までに管理戸数3千戸を目指す、と発表しました。
鉄道会社の営業対策から賃貸事業への進出が加速化しています。

ところで、内閣府が発表した1月の景気ウォッチャー調査によりますと、「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感が見られる。先行きは、海外情勢等に対する懸念もある一方、改元や大型連休等への期待が見られる」と予測しています。

また、帝国データバンク(TDB)が発表した1月調査の「TDB景気動向調査(全国)」結果によりますと、2019年1月の景気DIは前月比1.3ポイント減の48.1となり、2ヵ月連続で悪化しました。

景気予測はいつの時代も、不確定要素が複雑に係わり合って難しいものがあるようです。




平成30年「住民基本台帳人口移動報告」
都道府県間・内、市町村間移動者数
景気回復が影響して、前年比増加傾向



賃貸住宅の需要は転勤者や新入学生の動向で左右されます。
そうした住民の都市間の移動状況が、総務省からこのほど発表された平成30年の「住民基本台帳人口移動報告」にまとめられています。

それによりますと、平成30年の日本国内における日本人と外国人の都道府県間移動者数は253万5601人で、前年に比べて3万537人の増加となりました。
最も多いのは、20~24歳の男性です。

また、市区町村間移動者数は535万9174人となり、前年に比べ4万557人の増加で、都道府県内移動者数は282万3573人となり、前年に比べ1万20人の増加となりました。
都道府県間・内、市区町村間ともに前年比を上回ったのは、景気回復が影響して人的移動が活発化したものと見られます。

一方、都道府県別の転入超過数を見ると、転入超過となっているのは東京、埼玉、神奈川、千葉、愛知、福岡、大阪、滋賀の8都府県。
転入超過数が最も多いのは東京都の7万9844人で、転入超過数が最も拡大しているのも東京都です。


東京圏23年連続の転入超過、全市町村の72%で転出超過

3大都市圏では、東京圏が23年連続の転入超過で、名古屋圏、大阪圏はともに6年連続の転出超過となっています。
3大都市圏全体では12万3054人の転入超過。

全国的に見て転出超過となっているのは茨城県、福島県、新潟県、長崎県など39道府県。
転出超過数が最も多いのは茨城県の7744人。
なお、全国1719市町村のうち、転入超過は479市町村で、全市町村の27.9%。
逆に、転出超過は1240市町村と、全市町村の72.1%を占めています。




ニュースフラッシュ
節税需要の一巡とローン貸出し審査の強化で、
平成30年1年間の貸家新設が7年ぶりに減少



賃貸住宅の新設にブレーキがかかっているのが国の統計で明確になりました。
国土交通省の発表によりますと、平成30年1年間の貸家の新設が、前年比で7年ぶりの減少となっています。

前年比5.5%減の39万6千戸で、過去10年間で3番目の規模となっています。
さらに20年間にさかのぼった実績で見ると13番目となります。

前年比でプラスとなっているのは大阪・京都の2府と愛知、熊本など13県で、残り全てがマイナスと際立った現象を見せています。
昨年1年間で、8月がわずかながら前年比プラスとなりましたが、残り11ヵ月全てがマイナスですから、年間を合計すれば必然的にマイナスとなったものです。

理由はやはり、市場において節税需要が一巡したのと、各金融機関のアパートローン貸出し審査の強化が響いているようです。

こうしたことから市場においては、新築物件が減少する中での物件間の新たな競争など、何らかの変化が生じると見られます。




「住宅の居住志向及び購買等に関する意識調査」結果
借りるポイントはやはり「家賃」が最多


住宅購入者や賃貸住宅入居者の意識を昨年の「不動産の日」にアンケートした結果が、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)からこのほど発表されました。

「住宅の居住志向及び購買等に関する意識調査」は、20歳以上の一般消費者向けのアンケート調査で、約1万9千件の回答によるものです。

調査結果から、持ち家志向といわれる中、「持ち家派」に対して「賃貸派」は約20%で、平成25年以降最も高い割合となっています。
年代別に見ると、20~50代までの各年代で、ほぼ平均して20%代を占めています。

賃貸派の理由としては、「住宅ローンに縛られたくない」が最も多く、次いで「天災時に家を所有していることがリスクになると思う」「税金が大変」と続き、「仕事等の都合で引越しする可能性がある」「家族構成の変化で引越しする可能性がある」といった理由を挙げています。

若い年代ほど「住宅ローンに縛られたくない」傾向が強く、「転勤による引越し」のケースを懸念しているようです。


若い年代ほど家賃を重視、次いで生活環境にウェイト

住宅を借りる際のポイントは、やはり「家賃」が72%で最も多く、次いで「交通の利便性が良い」、「周辺・生活環境が良い」と続きます。
賃料に次いで生活環境を重視する傾向が見受けられます。
20~30代の若い年代ほど「家賃」を重視する傾向が強く、20代と60代以上の差は26%にも及びます。

このほかにも「間取り数・間取りプラン」「日当たり・住宅の向き」「耐震・免震・断熱・バリアフリー等の住宅の構造が良い」「住まいの広さ」「住み慣れているエリア」「不動産会社・建築会社などのアフターサービス」などもチェックしています。

物件情報入手経路については、「インターネット」が最も多いのですが、「不動産店へ直接行く」が2番目で、次いで「新聞折り込みチラシ」と続きます。
インターネット、スマホアプリは若年層ほど高く、新聞折り込みチラシ、新聞広告では、高年齢層ほど高い傾向が見られます。

ちなみに、不動産店に対して持っているイメージについて、「良い」合計が約31%と多く挙げられ、「悪い」合計は18%となっており、とくに20代は、不動産店に対して比較的良いイメージを抱いています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
急増する訪日外国人旅行者とこれから
グローバル化が進む賃貸経営の広がり



インバウンド消費の経済波及効果

最近とみにインバウンド関連のニュースを耳にします。
インバウンドとは訪日外国人旅行・旅行者のことで、日本政府観光局(JNTO)の発表によりますと、「平成30年の訪日外国人客数は、前年比8.7%増の3191万2千人で、JNTOが統計を取り始めた昭和39年以降、最多となった」としています。

例えば、日本銀行大阪支店がこの1月に公表した「関西におけるインバウンド消費の経済効果」において、「百貨店以外での買い物や、交通費、飲食・宿泊費等も含めた『インバウンド消費額』も増加を続けており、2017年度は1.3兆円となった。訪日外国人数の増加が続くもとで、経済効果の波及経路にも拡がりが窺える」と、インバウンド消費の経済波及を強調しています。

それでは、急増する訪日外国人旅行者と賃貸経営との関係を見てみます。

直接関係するのは民泊事業と思われます。
民泊事業は昨年6月より施行された「住宅民泊事業法」(民泊新法)によって、本格的にスタートを切り、賃貸住宅の空き部屋を宿泊施設として有効活用できると期待感が先行しましたが、人気と需要は高いもののまだ見直しの部分を残していて、法改正など運用面の改善が進んでいる最中です。

旅行者はあくまでもホテルや旅館などを利用する一時的な宿泊者ですが、長期滞在者になれば賃貸入居者となります。

外国人労働者受け入れ拡大が進み、日本経済の活性化とグローバル化の進行によって人の動きが根本的に変わろうとしている今日、賃貸経営においても外国人ニーズに本腰を据えて取り組む時期を迎えているようです。

いずれにしても、これから年間4千万人、5千万人と外国人旅行者が増えていけば、宿泊ニーズが拡大することは目に見えているのですから、合わせて賃貸需要の裾野が広がるのも十分予測されます。



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