2019年12月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2019年12月号エスト賃貸経営新聞

わが国住宅事情の最新データが「賃貸住宅」の実態を浮き彫り
大規模な自然災害から物件を守るのが経営課題に


今年も残り僅か。
月日の経つ速さに感慨もひとしおです。
新元号、令和がスタートして7ヵ月が過ぎ、社会に定着して安堵する一方で、相次ぐ台風の襲来により傷められた道路や河川の復旧が急がれます。
今年1月の賃貸市場をめぐる主な出来事をまとめてみました。

わが国の住宅事情を捉えた最新のデータが公表されました。
5年に一度実施される「平成30年度住宅・土地統計調査」結果の概要を見ますと、住宅の現況と賃貸住宅の実態がよく分かります。

それによりますと、調査時点の平成30年10月1日現在のわが国における総住宅数は約6241万戸で、総世帯数は約5400万世帯。
5年でそれぞれ2.9%、3%の増加率です。

このうち、借家数は約1907万戸で、住宅総数に占める割合は35.6%となっており、平成25年と比べて0.1ポイント上昇。
借家の内訳を見ると、「民営借家」が約1530万戸と、住宅総数に占める割合はおよそ3割近くを占めています。

気になる空き家は約849万戸で、総住宅数に占める空き家の割合の空き家率は13.6%。
その内訳は、「賃貸用の住宅」が約433万戸で、5年前と比べると、3万5千戸増となっています。
調査結果が昨年10月1日時点の瞬間的なものであっても、やはり増加傾向にあるのは否めないところです。

また、この調査から見える賃貸経営のおおもとの柱である家賃の傾向は、安定した市場を反映して過去20年、ほぼ横ばいながら微増と、乱高下することなく安定した賃貸市場が維持されているのが分かります。

ところで、今年の大きな話題となった一つに、消費税率の引上げがあります。
10月1日に10%に引き上げられて2ヵ月ほどしか経っていないので、景気への影響についてまだ本格的な分析が出ていませんが、それでも各方面に変化が生じているようです(2面『内閣府、日銀等の調査結果に見る10月以降の景況感』参照)。

アパートマンションの新築供給が大きく変化

一方、賃貸市場の現況とともに、今後の動向に参考となる賃貸住宅の新設着工も9月分の統計では、前年同月比16.8%減で、13ヵ月連続の減少となり、今年1~9月の賃貸住宅の新設着工の合計は、前年比約13.2%の減少となっています。

民間資金による貸家、公的資金による貸家がともに減少したため、貸家全体で減少となりました。
全国の賃貸住宅関連の投資傾向に各地域特有の多様な動きが表れて、アパート・マンションの新築供給が変化したもの。

また、今年一年を振り返って特筆されることに、台風の大雨によって決壊した堤防から水が溢れ、田畑や街並みを呑み込んだ災害があります。
空前の規模の自然災害に襲われた時、自身と所有する物件をどのように守っていくかがこれからの賃貸経営の課題になったようです。
今後ともこうした「自然災害への備え」をテーマに取り上げていきたいと思います。



 
内閣府、日銀等の調査結果に見る10月以降の景況感
悪化の中にも景気持ち直しへの期待感
 
 
10月の消費税率引上げに伴い、景気の先行きが注目されています。
そこで10月以降に公表された内閣府、日銀、帝国データバンクのデータを基に景気動向を取り上げてみます。
 
景気の指標となっている内閣府が公表する10月の景気ウォッチャー調査(街角景気)によりますと、10月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差10ポイント低下の36.7で、家計動向、企業動向、雇用のすべてのDIが低下したことから、3ヵ月ぶりの低下となりました。

景況感悪化の要因として景気ウォッチャーは、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動や台風19号等による影響が一部に見られる、と見ています。

先行きに対しては、年間最大の年末商戦が直近で控えていることから、前回の消費税増税時よりも景気回復のタイミングは早いと思われる、忘年会シーズンになるため、若干景気が上向くと予想される、被害からの復旧工事が進むことにより、入居率の上昇が見込めるなど持ち直しへの期待がみられる、としています。

貸家の着工は需要が一巡
金融機関の貸出の慎重化


全国的な住宅投資についても、日本銀行が10月開催の支店長会議に向けて収集した情報を基に集約する、地域経済報告「さくらレポート」(2019年10月)によりますと、住宅投資については、「弱めの動きとなっている」(北海道)、「横ばい圏内で推移している」(関東甲信越)、「持ち直し傾向にある」(東海、近畿)と、多様な見方をしています。

また、賃貸住宅関連の投資について主だった事例を見ると、「貸家の着工は、金融機関の融資審査の厳格化に加え、建築費の高騰により減少傾向にある。その一方で、採算性を考慮し、既存入居者のいる中古物件を取得して賃貸事業に取り組む先が増加している」(釧路)、「貸家の着工は、相続税の節税対応や資産運用手段としての需要が一巡したことのほか、金融機関の貸出スタンスの慎重化から、弱めの動きを続けている」(大阪、京都、神戸)などの声が挙がっています。

一方、帝国データバンクが発表した10月の「TDB景気動向調査」結果では、10月の景気DIは前月比1.1ポイント減の43.9となり、3ヵ月ぶりに悪化。
今後の国内景気は、消費の動向が鍵を握る中、貿易摩擦や世界経済の減速といった懸念材料も多く、不透明感が一層強まっている、と捉えています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
欲しい設備として大人気の「宅配ボックス」
種類も多種多様で後付け工事は比較的容易


高機能化で通信アプリとセット

賃貸住宅入居者が部屋を選ぶ際に欲しい設備として、「宅配ボックス」が大人気です。

宅配ボックスといえば、つい最近までは、あれば便利だがまだぜいたく品といった見方をされていましたが、温水洗浄便座同様に、あれば便利から必要度の高い設備となってきました。
賃貸住宅の募集サイトでも、宅配ボックス付きとして紹介されるケースが増えています。

ネットで買い物をする電子取引き(EC)が高い伸び率を見せ、需要は高まる一方で、市場規模の拡大が続いています。

留守をしている時に荷物(宅配物)が届いた場合、その荷物を一時的に収納するボックスがあればどれほど便利か、一人暮らしや共働き夫婦には実感されることと思います。
一方で、宅配便が増えるかたわら、二度訪問する再配達も増え、社会問題を引き起こしています。

国の方針でも宅配ボックスの設置促進は、再配達の減少につながり、働き方改革の実現とともに物流生産性革命推進の側面から重要度が高い、と捉えています。
そのために、共同住宅の共用廊下と一体となった宅配ボックス設置部分について国土交通省は、建築基準法施行令を改正して、宅配ボックスの設置をしやすくするようにバックアップしています。

さらに、宅配ボックスの高機能化が進み、賃貸住宅へのAI、IoT(物のインターネット)の導入と歩調を合わせ、スマートフォンなどの通信ユニットのアプリと宅配ボックスがセットされるなど、品質向上を果たしています。

宅配ボックスは大きさ、予算、用途面から様々な種類があります。
また、スチール製が主流ですから、既築の賃貸住宅にも後付け工事は比較的容易なため、スペースを工夫して設置すれば物件の差別化に結びつき、入居者募集にも役立ちますので、今後、着実に増えていくのではないでしょうか。




ちょっと一服
お世話になりありがとうございました
来年もよろしくお願いします



観光専門のシンクタンクのJTB総合研究所が実施した「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査」結果によりますと、SNSは消費の情報源の役割がより強まり、アプリは定番だけを残し、動作が軽いブラウザへと回帰の兆しで、最も利用されるスマホ決済は「PayPay」。
昨年首位の「Apple Pay」は10位となっています。

また、ハミガキ、洗剤メーカーのライオンが行った「スマホ時代の角膜上皮障害実態調査」では、眼科医の6割以上が10年前に比べて「角膜上皮障害を伴うドライアイ患者が増えている」と回答。
スマホはPCと比較して、画面との距離が近いことから、目への影響も大きいのが原因のようです。
便利さの半面、健康面のリスクを抱えていることを理解しておきましょう。

これから来年の手帳やカレンダーを買い揃えて、クリスマス、お正月と続き、一層せわしくなります。
オーナー様、お取引先各位、本紙をご愛読いただき、ひとかたならぬお世話になりありがとうございました。
ちょっと早いのですが、良いお年をお迎えください。




「30歳未満の学生、社会人の部屋探し調査2019年度版」
重視したことは、学生・社会人ともに
「通勤・通学に便利」「間取り・広さ」



一人暮らしをしている全国の18~29歳の学生・社会人男女を対象に実施したアンケート調査、「30歳未満の学生、社会人の部屋探し調査2019年度版」の結果が、不動産情報サービスのアットホームからこのほど発表されました。

それによりますと、現在の部屋の間取りは、学生・社会人ともに「1K」が最も多く、次いで「ワンルーム」。
社会人の「1LDK」の割合は16.4%と、2年前の同じ調査と比べると4.3ポイント増加しており、社会人は広めの物件に住む傾向にあります。

家賃の平均は、学生男性が4.5万円、学生女性が5.1万円、社会人男性が5.5万円、社会人女性が6.0万円で、2年前の調査と比較して、学生女性では0.1万円、社会人女性では0.4万円アップしており、女性の家賃平均が増加しています。
学生男性では増減なし、社会人男性では0.2万円ダウンと増加は見られません。

築年数は学生・社会人ともに「10年以内」がトップ

部屋から最寄り駅までの徒歩所要時間は、学生では「15分以内」が17.6%、社会人では「10分以内」が22.0%でトップ。
また、築年数は学生・社会人ともに「10年以内」がトップで、「新築」は学生では7.5%、社会人では13.4%と5.9ポイントの差があり、「新築」を選ぶのは社会人が多いようです。

最後まで重視したことは、学生・社会人よもに「通勤・通学に便利」「間取り・広さ」がトップツー。
学生女性は「セキュリティー」が36.4%で、学生男性より25.3ポイント多いという結果になっています。

一方、最後まで重視した設備では、「独立したバス・トイレ」がトップで、人気の設備となっています。
その他、学生では「インターネット接続料込み」、社会人では「独立洗面台」を重視しています。

住まいの探し方では、「スマートフォンで検索する」学生・社会人は79.3%、利用するサイト・アプリは「不動産ポータルサイト」がトップ。

問合せをした不動産会社数を聞いたところ、学生では32.9%、社会人では35%が「1社」と回答。
また、訪問した不動産会社数も「1社」が学生・社会人ともに約半数と最多。
インターネットで物件をしっかりと調べて絞り込んでから、不動産会社に問合せ・訪問しているようです。

なお、初期費用・家賃を「クレジットカード」で支払いたい学生は50%以上、社会人は75%以上。
初期費用・家賃をクレジットカードで支払いたい理由では、学生の1位が「現金で支払うよりも手間が省けるから」、社会人の1位は「ポイントが付くから」となっています。