2020年3月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2020年3月号エスト賃貸経営新聞

民法の債権関係を見直す「民法の一部を改正する法律」4月1日に施行
賃貸借契約に関するルールが法律によって明確に


「民法の一部を改正する法律」がいよいよ4月1日に施行されます。
成約ルールの抜本的な見直しとなる改正によって、賃貸経営においても、「敷金」「原状回復」「連帯保証人」などの取り扱いに関して新ルールが定められ、運用に際し、工夫が必要となりそうです。

明治29年に制定されて以来の大幅な改正となるだけに、ルール変更に伴う運用に関してしばらくの間、戸惑いが生じるのは避けられないかもしれません。

まず敷金の取り扱いで、賃借人の債務を担保する敷金については、「賃貸人は賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けたとき、または、賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは、賃借人に対し、敷金の額から賃貸借に基いて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務を控除した残額を返還しなければならない」とし、「賃貸人は、賃借人が金銭債務を履行しないときは、敷金を当該債務の弁済に充てることができる」と規律を設けています。

一方、原状回復義務については、「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由のときは、この限りでない」としています。

要は、敷金は「賃貸借契約が終了したとき、賃料の不払いがない場合、借主に返還しなければならない」と明文化、ルール化されるものです。
原状回復についても、「通常の使用による損耗、経年変化に損傷を除く」と明記されています。
基本的なことは、明確に規定されていなかった部分をこれまでの裁判判例や一般的な理解をルールとして明記、定めた点です。

つまり、従来、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を参照して解決してきたことを法律でルール化して、トラブルを未然に防ぐのが基本となっています。
参考レベルであった国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』が、より強く判断のベースになりますが、これまでのルールを変えるものではありません。

連帯保証人が保証する
金額の上限額を定める


また、今回の民法改正の重要なポイントの一つに、連帯保証人の極度額の取り扱いがあります。
保証人保護の観点から極度額(保証人が保証する上限額)を定め、かつ書面等で保証契約をしなければ、保証契約の効力が生じないと規定されています。
連帯保証人の契約については2面の「賃貸経営ワンポイントアドバイス」を参照してください。

なお、国土交通省からの住宅の賃貸借契約関連に関する民法改正の主な条文を解説した『住宅の賃貸借契約に関する民法改正の概要』が、法務省から賃貸借契約に関するルールの見直しを解説した『2020年4月1日から賃貸借契約に関するルールが変わります』がそれぞれのホームページに公開されています。

なにしろ約120年ぶりの法改正ですから、運用に際して予測されない間違いも出てきそうですが、疑問点やお困りのことがあれば、何なりとお尋ねください。




賃貸住宅入居者や住宅購入者の意識をアンケート調査
若い年代ほど家賃と交通の利便性を重視


賃貸住宅入居者や住宅購入者の意識をアンケート調査した結果が、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)から発表されました。

9月23日の「不動産の日」にちなんで一般消費者向け不動産に関する意識調査を実施したもので、調査対象は全国の年齢20歳以上の男女その他。

それによりますと、賃貸住宅を選ぶ消費者の意識は、ここ5年間大きな変化はなく、「賃貸派」は19.1%と、前年度同様高い数値を見せていますが、前年に比べて微減です。

賃貸派の理由の第一は「住宅ローンに縛られたくないから」で約42%を占め、次いで、「天災が起こった時に家を所有していることがリスクになると思うから」「税金が大変だから」を挙げています。
こうしたトップ3は30代が高い割合となっています。

住宅を借りる際のポイントは、「賃料」が約74%で最も多く、次いで「交通の利便性が良い」と続きます。
間取りや日当たりなど住宅そのものよりも、住宅が置かれている環境が重視されているようで、若い年代ほど家賃と交通の利便性を重視する傾向が強く、家賃に関して20代と60代以上の差は20ポイント以上となっています。

物件情報は「インターネット」と「不動産店へ直接行く」が主流

ところで、物件情報入手経路では、「インターネット」が最も多く、次いで「不動産店へ直接行く」「新聞折込チラシ」と続いています。

「インターネット」「スマホアプリ」は若い世代ほど高く、「新聞折込チラシ」「新聞広告」では、年代が高いほど多い傾向で、年代により利用する情報入手媒体に差異が見られます。
前年度に比べると「新聞折込チラシ」「新聞広告」が下がり、「スマホアプリ」が上がっています。

物件情報の入手の際、基本情報以外に「あると便利「」な情報では「物件の写真」が最も多く挙げられ、次いで「周辺状況の相場」「エリアの年齢層や世帯層」など。
「物件の写真」「物件周辺の子育て・教育環境」については、若い年代ほど高い傾向を見せています。

このように年1回公表されるデータですが、賃貸市場の具体的な姿がよく現れているだけに、消費者の賃貸ニーズを理解するのに参考になります。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
保証契約に極度額明記の新ルールの導入
加速する機関保証の家賃保証とのセット



限度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効

現地にお客様を案内して、入居が決まりますと、次に賃貸借契約を結びます。
その際、「連帯保証人」をお願いしますが、この4月1日の民法改正によって「保証契約」に新しいルールが導入されます。

最大のポイントは、「今回の法改正では、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効とするというルールが新たに設けられました」(法務省)。

「根保証契約」とは、「将来発生する不特定の債務について保証する契約をいいます。例えば、不動産の賃借人の一切の債務の保証がこれに当たります。根保証契約を締結して保証人となる際には、主債務の金額が分からないため、将来、保証人が想定外の債務を負うことになりかねません」(同)

要は極度額を決めていない個人の根保証契約は無効としていますから、従来、連帯保証人が負担する債務の上限額に記載されなかった保証金額について、上限の明記が必要となります。

契約書に極度額「○○万円」具体的な金額が記載されることになるのです。
そうしますと、極度額を設ける趣旨は保証人の負担を改善するところにあるのですが、金額が明記されることから連帯保証人の負担金額が浮き彫りになって、ともすれば敬遠されがちな保証人のなり手がより狭まる恐れが出てきます。

賃貸経営的には極度額を多くすれば万一の際の保証に有利に働くのですが、前途の通り保証金額として契約書に記載されるため、保証人の腰がこれまで以上に重くなるかもしれません。

契約を結ぶ際の「連帯保証人」は賃貸経営上なくてはならないもので、二人が理想ですが、二人ではやはりハードルが高いので、連帯保証人一人と機関保証の「家賃保証」をお願いするケースが増えており、今後はこうした傾向が加速するのではないでしょうか。

この極度額について、次号でもう少し説明したいと思います。




ちょっと一服
国土交通省、心理的瑕疵に本腰の姿勢
ガイドラインの策定向けた検討を開始



近年、賃貸住宅の契約において高い関心を集めている心理的瑕疵について国が本腰を入れて取り組む姿勢を見せています。

国土交通省が「第1回不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」を2月5日に開催。
心理的瑕疵に係る適切な告知、取り扱いに係るガイドラインの策定に向けた検討を開始しました。

これは不動産取引において、過去に死亡事故が発生した事実が引き起こす、いわゆる心理的瑕疵をどのように取り扱うかが課題になっていることから、何らかのガイドラインをまとめようというものです。

宅地建物取引業者、消費者団体、弁護士等による検討会を立ち上げ、不動産取引における心理的瑕疵に係る適切な告知、取り扱いに係るガイドライン策定に向けた検討を進める、としています。

賃貸住宅において発生した事件・事故死の取り扱いは賃貸経営の影響が小さくないだけに、これまでモヤモヤしていましたが、こうした委員会がガイドラインを明確に打ち出すことで、解決の方向が示されると期待されます。




令和元年の貸家の新設着工数、前年比13.7%現
過去10年間で下から4番目、20年間で5番目の規模
一方で賃貸住宅の供給はコンスタントに続く



賃貸住宅の新築は市場では人気が高く、部屋を探すお客様はまず最初に新築に目が行きます。
また、市場動向のバロメーターとして、賃貸住宅の新設がチェックされており、国土交通省から公表された昨年1年間の新設着工数は、ここ1~2年の賃貸市場の傾向をよく表しています。

国土交通省が公表した令和元年の貸家の新設着工数は、前年比13.7%減の約34万2千戸となりました。
2年連続の減少です。
ここ10年間で下から4番目の規模で、過去20年間で見てもらうと5番目となっています。
14年前の平成18年の新設が約54万3千戸ですから、37%の落ち込みです。

3大都市圏別でも、首都圏の約12万4千戸、中部圏の約3万5千戸、近畿圏の約5万2千戸、その他地域約13万戸と、全てで前年比2桁のマイナスとなっています。

過去15年間でも常に新設全体の40数%を貸家が占めています

消費税増税の反動でこの1~3月期に下げ止まりによる持ち直しが予測されるといった見方がありますが、市場の厳しい状況からそれほど好転、つまり新築増が起きるとの見込みは薄いようです。

ただ見方を変えると、最盛期と比較すれば貸家の新設は減少しているのですが、年間建設される住宅で、分譲住宅、持ち家と比べて過去15年間でも常に新設全体の40数%を貸家が占めています。
賃貸住宅の供給がコンスタントに続いているのです。

なお、昨年12月の貸家の新設着工戸数は、前年比10.3%減の2万7,611戸で、16ヵ月連続での減少でした。
前月の11月同様、民間資金による貸家が減少し、公的資金による貸家も減少したため、貸家全体で減少となったものです。