2020年4月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2020年4月号エスト賃貸経営新聞

国内景気は新型コロナウイルスの影響も加わり大幅に悪化
ネットを活用したIT接客・重説に期待広がる


新型コロナウイルスの感染拡大が続き、社会の各方面、経済に大きな影響を及ぼしています。
賃貸住宅市場においても春の繁忙期と重なり、新規商談に響いています。
新型コロナウイルスによる影響や賃貸経営を取り巻く最新事情を探ってみました。

景気の指標となっている内閣府が3月9日に発表した「景気ウォッチャー調査」(2月)の最新の結果は、現状判断DIが前日差14.5ポイント低下の27.4となりました。
景気ウォッチャーの見方は、「新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に厳しい状況となっている。先行きについては、一段と厳しい状況になるとみている」とまとめています。

一方、帝国データバンクが3月4日に発表した2月調査結果の「TDB景気動向調査(全国)」によると、「2月の景気DIは前月比3.2ポイント減の38.7となり5ヵ月連続で悪化し、7年ぶりに40を下回った。新型コロナウイルス感染症の影響が全国的な広がりをみせ、業界・規模に関わらず景況感が大幅に悪化した。訪日客の減少や各種イベントの自粛、外出の手控えなど経済活動が大きく制約された。今後の国内景気は、新型コロナウイルスなどリスク要因も多く、緩やかな後退が続くとみられる」と捉えています。

また、東京商工リサーチが3月9日に発表した、上場企業の「新型コロナウイルス影響」調査によれば、「感染拡大の進行で、インバウンド需要の停滞に加え、消費低迷やイベント自粛などが企業業績に悪影響を及ぼしている。今後も会合や宴会、旅行のキャンセルなど個人消費の減退が進むなか、内需型産業も含めてあらゆる業種への波及が懸念される」としています。

こうしたことから不動産・賃貸住宅業界では、政府が公表している『新型コロナウイルス感染症対策の基本方針』や『新型コロナウイルス感染症の対応について』をもとに、様々な対策を講じています。

1日も早い終息を願うばかりです

社員のマスク着用、店舗におけるアルコール消毒液、空気清浄機の設置。
そしてテレワークの導入、インターネットを通じたIT接客、タブレットやスマートフォンを利用した内覧、重要事項説明などの広がりに期待が集まっています。

もともと不動産・賃貸住宅の情報管理は、デジタル化に適したところがあります。
人と人の接触が自粛されるこの時期、感染リスクを軽減するためにも、インターネットやITの利用は大きな課題となっています。

政府等から公表されたデータは2月から3月にかけての動向をまとめたもので、これから4月以降、感染拡大の鎮静化の兆しが見えるのか、さらなる拡大に向かうのか、今の時点では予測がつきません。
できる範囲内で工夫をしながら、1日も早い終息を願うばかりです。




「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律案」
サブリース勧誘・契約締結の適正化
賃貸住宅管理業の登録を義務付ける



「サブリース」や「賃貸住宅管理業」をめぐって、市場の環境整備が進みそうです。
サブリース業者による勧誘・契約締結行為の適正化と賃貸住宅管理業の登録を義務付けた「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律案」が3月6日、閣議決定しました。
国会で成立後、施行されます。

これは、「賃貸住宅は賃貸住宅志向の高まりや単身世帯、外国人居住者の増加等を背景に、今後も我が国の生活の基盤としての重要性は一層拡大」「一方、賃貸住宅の管理は、従前、自ら管理を実施するオーナーが中心であったが、近年、オーナーの高齢化や相続等に伴う兼業化の進展、管理内容の高度化等により、管理業者に管理を委託等するオーナーが増加」していることが背景にあると、国土交通省は説明しています。

今回の新法案の骨子は、「サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置」と「賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設」がメインとなっています。

管理業務の実施をめぐるトラブルを避けるため

「サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置」では、全てのサブリース業者に対し、勧誘時における、故意に事実を告げず、不実を告げる等の不当な行為の禁止やサブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の締結前の重要事項説明等を義務づけています。

また、「賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設」では、賃貸住宅管理業者の国土交通大臣による登録を義務づけています。

このように、管理業務の実施をめぐりオーナー様を始め、入居者、管理業者との間でトラブルを避けるために、新法案の成立を図るものです。




ニュースフラッシュ
新型コロナウイルスの影響によって
「不動産価格指数」修正局面を迎えるか



年間約30万件の不動産の取引き価格情報をもとに、不動産価格の動向を指数化した「不動産価格指数」が毎月、国土交通省から公表されています。

最新の令和元年11月分の全国住宅総合・不動産価格指数は、前年同月比で60ヵ月連続して上昇。
マンション・アパートの一棟の不動産価格指数もここ10年間に3割を超える上昇を見せています。
こうした上昇の背景として、低金利環境が挙げられているのですが、ここへきて新型コロナウイルスの影響によって修正局面を迎えたようです。

土地価格は不動産投資の動向に敏感に反応するのですが、インバウンド需要から起きた店舗、ホテル、マンション需要が今後、鈍るのは避けられず、緩やかな上昇基調を継続していた主要都市の地価は、調整局面を迎えるようです。
これから公表される路線価や基準地価、固定資産税評価額などの土地価格がどのような変化を見せるのか、注目されるところです。




居住の変化をまとめる「平成30年住生活総合調査」結果
借家から借家への住み替え意向が総じて増加


住生活を取り巻く環境の変化を調査した「平成30年住生活総合調査」結果の速報値がこのほど国土交通省から発表されました。
住宅、居住環境の評価など、入居者の住居への思いがまとめられています。

この調査は5年周期で実施してきたもので、今回は平成30年12月1日現在の4万7千世帯分を集計。
内容的には「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省)を補完するような内容です。

調査結果は全世帯の持ち家、借家の状況を取り上げていますが、ここでは主に借家に絞ってまとめてみました。

借家の内訳は民営賃貸住宅、都道府県・市区町村営賃貸住宅、都市再生機構(UR)などで、総世帯数全体の30%、1611万世帯。
ちなみに、民営賃貸住宅は全世帯の23.4%、1257万世帯を占めています。

まず、住宅・居住環境の個別要素の重要度について、全世帯では治安、日常の買物などの利便、子育て世帯では治安、通勤・通学の利便、高齢者世帯では日常の買物などの利便、地震時の安全性等を重視しています。

借家の居住費負担は「何とかやっていける」が最多

そして、住宅及び居住環境に対する総合的な評価については、不満率は継続して減少し、昭和58年の38.4%から21.5%となっており、住宅に対する不満率は20年前と比較して半減しています。
持ち家と借家の不満率はこれまで借家の方が高かったのが、その差は年々変化し、居住環境に対する評価で平成30年には逆転しています。
賃貸住宅の品質が向上したことを物語っているようです。

また、平成30年の借家における住居費用負担に対する評価では、「ぜいたくはできないが、何とかやっていける」が最も多く、次いで「ぜいたくを多少がまんしている」「家計にあまり影響がない」「生活必需品を切りつめるほど苦しい」の順となっています。
25年と比較すると、「ぜいたくはできないが、何とかやっていける」が増加し、「家計にあまり影響がない」「生活必需品を切りつめるほど苦しい」が減少。
「ぜいたくを多少がまんしている」の変化は小さくなっています。

ところで、最近5年間に住み替えを実施した世帯の半数は借家から借家への住み替えで、借家から持ち家への住み替えも含めると、全体の約8割が借家からの住み替えとなっています。
今後の住み替え意向については、現在借家の世帯の持ち家への住み替え意向が約36%、借家などへの住み替え意向が約38%となっています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
4月1日以降の締結は新しい民法が適用
連帯保証人、極度額の取り扱いに要注意



自動更新等の取り扱いに経過措置の注意が必要

いよいよ4月1日から「民法の一部を改正する法律」がスタートします。
約120年ぶりといわれる法律改正だけに、実際の運用に際して予測されない問題も出てきそうです。

そこで改めて改正民法のポイントをおさらいしておきたいと思います。

原則として賃貸借や保証などの契約は、施行日より前に締結された契約については改正前の民法が適用され、施行日後に締結されたものは改正後の新しい民法が適用されます。

現在締結済みの既存の賃貸借契約は、そのまま継続されますが、既契約分の更新がこれから出てきますので、自動更新等その取扱いに関する経過措置の注意が必要です。

今回の改正民法の重要な改正点の一つに、連帯保証人の極度額の取り扱いがあります。
保証人保護の観点から保証人が保証する上限額の極度額を定め、かつ書面等で保証契約をしなければ、保証契約の効力が生じないと規定されています。
極度額の設定が義務化され、4月1日以降に契約する場合には極度額を明示しないと契約自体が無効となります。

そのため賃貸借契約書に極度額「〇〇円」と具体的な金額が記載されることになります。
極度額に上限はありません。
確かに、極度額を多額にすれば万一の際の保証に有利であるのですが、保証金額として具体的に契約書に記載されるため、保証人の腰がこれまで以上に重くなり、敬遠される傾向が強くなるかもしれません。

賃貸経営上なくてはならない連帯保証人です。
連帯保証人一人と機関保証の「家賃保証」をお願いするケースが増えていますが、今後は機関保証による「家賃保証」の比重が高まると見られます。

改正民法の運用での注意は、原状回復と連帯保証人が保証する極度額の取り扱いに集中しそうです。