2021年5月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2021年5月号エスト賃貸経営新聞

各種調査結果から見る賃貸住宅市場を取り巻く最新の動向
先行き不透明感から賃貸住宅投資の弱い動き続く


新緑の美しい5月を迎えましたが、新型コロナウイルス感染の猛威が続いています。
高齢者向けのワクチン接種が始まりました。
今後のワクチン接種の広がりに期待が集まっています。
賃貸市場を取り巻く最新の動向をまとめてみました。


やはり今春の賃貸市場は例年と違った展開となりました。
コロナ禍にあって、部屋をお探しのお客様の来店、問い合わせはやや鈍いものの、春の時期特有の賃貸住宅ニーズがなくなったわけではありませんので、部屋付けは着実に行われています。
ただ、いつもなら3月の年度末には部屋探しの山は越え、4月に入って中頃までにはおおかたが終了となるのですが、今年は5月の連休、中盤まで続きそうです。

それでは賃貸市場を取り巻く足下の経済情勢を見ていきたいと思います。

景気の指標となっている内閣府公表の3月の景気ウォッチャー調査では、「景気は新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直している。先行きについては感染症の動向を懸念しつつも、持ち直しが続くとみている」とまとめています。

(株)帝国データバンクの3月調査は「緊急事態宣言の解除で経済が徐々に活発化し、2ヵ月連続で上向いた。今後の景気は、下振れリスクを抱えながらも、緩やかに上向いていくと見込まれる。業界別で不動産DIは、前月比2.3ポンと増の40.6。2ヵ月連続のプラスとなり、令和2年2月以来1年1ヵ月ぶりに40を上回った」としています。

また、日本銀行が4月15日開催の支店長会議に向けて収集した情報をもとに集約した、地域経済報告「さくらレポート」(令和3年4月)によりますと、各地域の景気の総括判断は、「多くの地域で新型コロナウイルス感染症の影響からサービス消費を中心に引き続き『厳しい状態にある』としつつも、全体としては『持ち直し基調にある』または『持ち直しつつある』」と捉えています。

賃貸住宅の投資について企業の声として、「貸家の着工戸数は金融機関の慎重な融資スタンスを受けて低水準で推移している。当面は所得環境が悪化するもとで弱い動きが続く見通し」(横浜)、「貸家は、金融機関の審査目線が引き続き厳しいほか、感染症による先行き不透明から、オーナーが契約を見送るケースもあり、契約数は低水準」(名古屋)、「貸家では、金融機関の貸出態度が厳しい中、感染症の長期化による先行き不透明感を受けた投資需要の減退から、弱めの動きが続いている」(神戸、大阪)など、金融機関の貸し出し厳格化と各地の新型コロナウイルス感染症の影響によって、賃貸住宅の着工も下げ止まっています。




ニュースフラッシュ
賃貸住宅向け「アパートローン」の新規貸出額
令和元年度の実績は2兆5,799億円



賃貸住宅の建設、購入に広く利用されています「アパートローン」の令和元年度の実績が、国土交通省から公表されて「令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査報告書」の中で取り上げられています。

それによりますと、令和元年度の賃貸住宅向け新規貸出額は4万665件、2兆5,799億円で、平成30年度より1,203億円減少し、平成28年度より1兆1,035億円減少。
経年集計では、令和元年度の賃貸住宅向け新規貸出額は対前年度比12.5%減となっています。
新規貸出の金融機関の上位は地方銀行、信用金庫、都市銀行・信託銀行他、農業協同組合、モーゲージバンク等。

一方、令和元年度末の賃貸住宅向け貸出残高は58万8,356件、32兆2,417億円で、平成30年度末より5万3,689件、2兆4,692億円増加し、平成28年度より4兆7,251億円増加。
経年集計では令和元年度末の賃貸住宅向け貸出残高は対前年比0.5%増となっています。




不動産の売買取引に「IT重説」の本格運用が開始
9月のデジタル庁創設で大きく変革


不動産の売買取引において、テレビ会議等のITを活用したオンラインによる重要事項説明(IT重説)の本格運用が開始されます。
デジタル庁創設とともに、国の情報システムが一気に進みそうです。


すでに平成29年10月より、賃貸取引においてIT重説の本格運用が開始されていますが、今回新たに売買取引においてもIT重説の本格運用がこの3月30日から開始されたものです。

これでIT重説が認められている不動産取引は、賃貸契約及び売買契約の取引きです。
宅地または建物の取引の売買、交換もしくは売買の代理または媒介、貸借の代理または媒介について、IT重説を行うことができます。

IT重説は、一定の要件の下で実施されたテレビ会議等のITを活用したオンラインによる重要事項説明を、対面による重要事項説明と同様に取り扱うものです。

当該要件やトラブルを回避する観点から実施することが望ましい対応等については、一定の要件を含めた遵守すべき事項、留意すべき事項、具体的な手順工夫事例の紹介がマニュアル化されています。

売買取引においてIT重説を実施することにより、遠隔地に所在する顧客の移動や費用等の負担が軽減することや、重要事項説明実施の日程調整の幅が広がるなどの効果が期待されています。

「デジタル改革関連法案」で賃貸住宅市場も変革進む

なお、IT重説の本格運用の開始に当たり、売買取引に係わるIT重説を対面による重要事項説明と同様に取り扱う旨を「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に追加するとともに、宅地建物取引業者が適正かつ円滑のIT重説を実施するためのマニュアルが作成されました。

今年9月にデジタル庁が創設され、デジタル社会の形成を図るデジタル改革関連法案が施行されるのを控え、不動産・賃貸住宅市場にも変革の足音が大きくなってきました。

「デジタル改革関連法案」では、宅地建物取引業法の一部改正、借地借家法の一部改正、建物の区分所有等に関する法律の一部改正などを含み、押印を不要とするとともに、書面の交付等を求める手続きについて電磁的方法により行うことが可能、としています。
また、建物の賃借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされた時は、その契約は、書面によってされたものとみなすとしています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
日常の清掃作業が物件の美観を保ちます
管理形態でご負担の内容が違ってきます



清掃に力をいれ、できるだけ長く建物の新しさを維持

賃貸経営に役立ち、たいした負担がかからず、直ぐにもできることに日々の「清掃」があります。
新築の建物も、時間の経過とともに古くなっていきますが、たとえ古くなっても古さを感じさせない、あるいは古いなりに落ち着いた清潔感に満ちた雰囲気を醸し出せば、それが立派なセールスポイントになり、部屋を探しているお客様の背中を押すことにもなります。

新築は競争に強く、人気が高いことはよく知られています。
ですから、できるだけ長く建物の新しさを維持することが求められるのです。

建物は時間の経過とともに古くなっていくことは、ある面仕方のないことです。
とくに賃貸住宅は入退去が繰り返されるために、どうしても傷みが速く、それに比例して老朽化も加速されます。
そこで、清掃に力を入れて汚れを防ぎ、美観を保つ重要性が増してきます。
つまり、建物が古くなることで美観が損なわれ、競争力を失い、家賃の下落を招くのを防ぎ、賃料の下落を清掃によって少しでもカバーすることです。

ところで清掃には、特殊な薬品や電動ブラシの機械を使った本格的な作業もありますが、基本は敷地内、建物周辺のゴミを拾い、草を引き、ぞうきんで汚れを拭き取る。
こうした日常の基本的な清掃作業で、物件の美観は保たれます。

また、清掃は建物の美観を保つほかにも、入居者の意識を高めることにも役立ちます。
人間の心理として、きれいに清掃された場所は汚したり設備、機器類を乱雑に扱えない面もあります。
清掃を通して、入居者とのコミュニケーションが深まるといった効果もあります。

ただ、こうした清掃も管理形態によりましてオーナー様のご負担の内容が違ってきます。
ご自身での清掃作業が時間や距離的な問題等のため、負担に感じる場合は、遠慮なくご相談ください。




ちょっと一服
経済のリバウンドに備える投資の積極派
価格変動のチェックには目が離せません



一年で最もすがすがしい風薫る季節を迎えました。
本来な山海の珍味を求めて各地の温泉地へといそいそと出かけているはずなんですが、昨年に続いて今年も遠方へ出向くことはできません。
じっとガマンの自粛の生活です。
早く『コロナの嵐』が落ち着くことを願うばかりです。

この時期の不動産市場を見渡しますと、「金融緩和」の融資を最大限に活かして有望な物件に積極的に投資する、早晩、経済のリバウンドが起きるのは間違いないのだから、運用の選択に注意を払っている…とする積極派が結構いらっしゃいます。
一方、弱気の波動が働いて、これらの低迷は避けられないと見ておられる方も一定数を占めているようです。

それでも不動産市場は不動産市場特有の動きをしますので、価格変動のチェックには目が離せません。
ただ、景気指標や価格動向を公表するシンクタンク等の調査会社は、独自のデータで分析しているため、時にやや差異が生じることもありますので、各種の調査結果は俯瞰的に見ることも必要なことです。




「住生活基本計画」(計画期間:令和3年度~令和12年度)
世帯数は令和5年をピークに減少に転じる見込み
高齢者世帯数は今後10年緩やかな増加



新たな時代における住宅政策の指針として、計画期間が令和3年度から令和12年度に及ぶ、「住生活基本計画」が国土交通省から公表されました。

同省では今後、この計画に基づき関係行政機関と連携し、一人ひとりが真に豊かさを実感できる住生活の実現に向けて取り組む、としています。
そこで、これから10年にわたって国民の住生活に影響を及ぼすとみられる「住生活基本計画」のポイントを見ていきたいと思います。

住生活をめぐる現状と課題について、「我が国の世帯数は、人口減少下においても増加を続けており、令和5年の5,419万世帯をピークに減少に転じる見込みである。また、世帯数の4割弱を占める単身世帯数も増加を続けており、令和14年の2,029万世帯をピークに減少に転じる見込みである」と捉えています。

高齢者世帯数については、「増加を続けるが、今後10年間は緩やかな増加にとどまる見込みである」とし、「在留外国人の数は、直近10年間で約80万人増加し、約293万人となっている等、住宅の確保に配慮を必要とする者は多様化している」と見ています。

「契約・取引プロセスのDXの推進」が基本的な施策として取り上げられる

一方、新技術の活用、DX(デジタル・トランスフォーメーションの進展については、「5G等の情報通信インフラの全国整備が進むとともに、社会経済のDXが進展し、AI等を活用した新しいサービスの提供や利便性の高い住まいの実現に向けた技術開発が進められている」と大きな流れを説明。
また、「住宅分野においても、コロナ禍を契機として、遠隔・非接触の顧客対応や契約交渉等、DXの動きが急速に進展する中で、こうした社会経済の変化に対応した産業への転換が求められている」と展望しています。

なお、新技術を活用した住宅の契約・取引については「持家・借家を含め、住宅に関する情報収集から物件説明、交渉、契約に至るまでの契約・取引プロセスのDXの推進」を基本的な施策として取り上げています。