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2018年7月号エスト賃貸経営新聞

「平成29年度住宅市場動向調査報告書」に見る賃貸住宅市場の最新事情
賃貸市場のメインは新築~築30余年の物件で構成



「住宅市場動向調査報告書」の平成29年度版がこのほど、国土交通省から発表されました。
住宅白書といわれるこの調査結果から、賃貸住宅の選択理由、物件に関する情報収集の方法、家賃の傾向など、賃貸住宅入居者の今日の平均像が読み取れます。

首都圏、近畿圏、中部圏を中心に実施されたこの調査は、現在の住宅事情、及び「賃貸住宅市場」の全体的な傾向を理解するのに参考になります。

それによりますと、「賃貸住宅の選択理由」として、「家賃が適切だった」が最も多く、次いで「住宅の立地環境が良かった」「住宅のデザイン・広さ・設備等が良かった」「昔から住んでいる地域だった」「子育てに適した環境だった」からが続き、これらがベスト5。
そして7位が「信頼できる不動産業者だったから」で、過去5年間ほぼ同じ結果です。

賃貸住宅を選ぶ理由として、1に家賃、2に立地・環境、3に部屋の広さ・設備と、この3点に集約されていることがよくわかります。
その上で、「信頼できる不動産業者」の適格なアドバイスで契約されているのが市場の実態といえそうです。

また、物件に関する情報収集の方法として「不動産業者で」が52%、次いで「インターネットで」が約36%と、賃貸物件を探す窓口は不動産会社が首位となっています。

昨年と違い不動産業者が6ポイント増え、その分インターネットが減少しています。
この他には、「知人等の紹介」「住宅情報誌」「勤務先で」などがありますが、主流はインターネットです。

インターネット、スマホのソーシャルネットワークサービスがこれだけ普及しても、人と人が対面して物件を詳細に理解し、納得した上で契約を結んでいるのがよく分かります。

やはり賃貸市場において、部屋を探す基本は入念に説明を受けた上、信頼できる不動産会社の窓口で契約するのが一番、という流れは大きく変わらないようです。


平均築後年数は18.5年
新築~築23年ものが約半数


次に、賃貸住宅を選ぶ際に重要視した設備の「間取り・部屋数が適当」「住宅の広さが十分」「台所の設備・広さが十分」「浴室の設備・広さが十分」「住宅のデザインが気に入った」5項目も過去5年間、ほぼ変わっていません。
設備関連の基本は、間取り・部屋数・広さ・台所設備・浴室設備・住宅デザインに代表されているようです。

ところで、賃貸住宅の建築時期(築年数)は、、「平成27年以降」が約19%、「平成17年~26年」が約15%、「平成7年~16年」が約18%、「昭和60年~平成6年」が約21%となっています。

平均築後年数は18.5年で、およそ新築~築23年ものが市場の約半数、築32年で全体の約72%を占め、賃貸市場は新築~築30余年の物件で構成されているのが分かります。



ニュースフラッシュ
主要都市の地価、緩やかな上昇基調が継続
旺盛な訪日観光客による消費・宿泊需要



今年1月1日~4月1日を調査対象とした「地価LOOKレポート」(国土交通省)によれば、主要都市の地価は、全体として緩やかな上昇基調が継続しています。

上昇地区数の割合が、はじめて9割を上回り、緩やかな上昇の地区が大半。
東京圏、大阪圏では、住宅地を中心に一部地区で上昇幅が拡大し、地方圏では広島市の上昇幅が拡大した一方、仙台市では縮小となっています。

比較的高い上昇を示した地区は、札幌市の駅前通、東京都の渋谷、表参道、横浜市の三宮駅前、福岡市の博多駅周辺など。

上昇の主な要因として、空室率の低下等オフィス市況の好調、再開発事業の進捗により繁華街が向上、訪日観光客による消費・宿泊需要が旺盛、利便性の高い地域等でのマンション需要が堅調などが挙げられ、オフィス、店舗、ホテル、マンション等に対する投資が引き続き堅調となったものです。




「平成29年度住宅市場動向調査」に見る賃料動向
家賃、敷金、礼金等ほぼ横ばい傾向


国土交通省が発表した「住宅市場動向調査報告書」の平成29年度版から、家賃や敷金・保証金等の動向をピックアップしてみました。
賃貸住宅の賃料の一つの傾向が表れています。

賃貸住宅の賃料は地域の相場(価格帯)によって決定されることが多く、同一地域内であっても道路一本奥に入ったり、角地、日当たりなど条件が異なれば違ってきます。
この調査報告書は、賃料の平均的な傾向を理解するのに参考になるデータと思われます。

調査によりますと、入居した賃貸住宅の家賃ですが、月額の平均は7万3639円。
月額家賃の内訳を見ると、7.5万円未満が全体の半分近い42%で、5万円未満が約17%、10万円未満が約25%、10万円以上が15%。

過去5年間大きな変化はなく、ほぼ横ばい傾向ですが、それでも5年前と比較すると、7.5万円未満、10万円未満がわずかながらも増えており、5万円未満、10万円以上が減少しています。
あくまでも全国の平均で、間取り・築年数等の比較ができないので概要として捉えてください。

また、共益費の平均は月4498円で、この3年間ほぼ同じで、家賃についても非常に負担感があると、少し負担感があるの合計が約63%で、昨年よりやや上昇しています。


敷金・保証金があった世帯は全体の約61%

敷金・保証金についても、ここ3年ほとんど大きな変化はなく、敷金・保証金があったという世帯は全体の約61%で、その月数は「1ヵ月ちょうど」が約53%、「2ヵ月ちょうど」が29%となっています。
1~2ヵ月の合計が8割強ですから、このラインが主流を占めています。

礼金については、礼金があったという世帯は41%で、月数は「1ヵ月ちょうど」が約66%と最も多く、2ヵ月ちょうどが約21%となっています。
過去5年間を見ても1ヵ月ちょうどの割合が最も多く、1~2ヵ月合わせて91%で、1~2ヵ月分の礼金が定着しているようです。

賃貸住宅の家賃に関係した部分を取り上げてみました。
あくまでも全国3大都市圏における平均的なデータです。

なお、賃貸住宅入居世帯の世帯年収は4百万円未満の世帯が約39%と最も多く、次いで4百万~6百万未満が約27%、平均世帯年収は462万円となっています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
入居者目線で「外構」周りをチェック
不要なものを徹底して取り除くこと



物件が評価される核心部分

秋の商戦までに少し間がありますので、建物の魅力アップに「外構」を今一度、チェックしてみてはいかがでしょうか。

賃貸住宅が選ばれる決め手は、家賃、立地・最寄り交通機関、設備内容にあることはよく知られています。
この3点とはまた違って、物件が評価される核心となっているのが「外構」です。
外構は門、塀、柵、垣根、植栽のほか、駐車場、ゴミなど、敷地内に設置された施設・構造物で、よく、住宅・建物は外構で決まる、といわれます。
建物や敷地に設置された施設の内容次第で、建物全体のイメージ、評価を決定する、という意味で使われているものです。

入居者は外出したり、外から帰ってくる時に、建物の門扉をくぐり、アプローチや廊下を通ってわが部屋と行き来します。
その時の入居者の目線と気持ちを尊重することも賃貸経営上、大事なことではないかと思われます。
つまり、見た目が清々しく、気分が和み、心地よい状態であれば、評価はグ~ンと上がるはずです。

そこで外構のあり方を考えるのは、人が気持ちよく快適に暮らすのに不必要と思われるものを敷地内に置かないことに通じるのではないでしょうか。

その上で植栽や、シンボルツリーなどを一工夫すれば、高感度の高いイメージが生み出されます。
要は、外構は景観を決定するものであり、それは常に入居者目線を忘れないことに繋がることだと思います。

敷地も補修の予算も限られている中、外構のイメージアップにどのような手を打つかですが、清掃にもつながることで、まず敷地や廊下など目につく場所の不要なものを徹底して取り除くこと、そして壊れたり、塗料のはげた箇所を補修することです。

不要なものを処分して、傷んだ処を直すことで、見栄えが大分違ってきます。
経費をかけることなく、入居者目線で外構・周りを点検してみてください。




ちょっと一服
景気動向とともに不動産市況の行方に目が離せません


帝国データバンク(TDB)が発表した、5月調査の「TDB景気動向調査(全国)」結果によりますと、5月の景気DIは前月比の0.4ポイント減の49.4となり、2ヵ月連続で悪化した、といいます。
日本経済を取り巻く環境に不透明感が増す中、国内景気は原油価格上昇が企業や個人のコスト負担増を招いたことが響き、足踏み状態が続いた、としています。

一方、活発なインバウンド需要が不動産市況全般に好影響を与えているのが、「地価LOOKレポート」(「ニュースフラッシュ」参照)などから読み取れます。
民泊がいよいよ本格的にスタートしたこともあって、これからしばらく景気動向とともに不動産市況の行方に目が離せません。

ところで、今月号は国土交通省から公表された平成29年度版の「住宅市場動向調査」結果のデータを中心に、現在の賃貸住宅市場の概況をまとめてみました。

三大都市圏におけるデータであるのと、調査アンケートの回収数も577件と限られているため、一つの傾向値として見るのがふさわしいのではないでしょうか。
それでも国が賃貸住宅の状況を把握するために年に一度実施しているだけに、賃貸経営上、参考になるデータとなっています。




「定期借家制度」最新事情
「定期借家制度を利用した借家」の比率は2.3%
制度がスタートして18年が経過するも伸び悩む



施行されて20年近くになる契約期間の満了により更新されることなく終了する制度「定期借家制度」の運用頻度が明らかになりました。

国土交通省が発表した「平成29年度住宅市場動向調査」で、定期借家制度の利用者が意外に少ないのが分かりました。
それによりますと、賃貸契約の種類は97.5%が普通借家契約。
「定期借家制度を利用した借家」の比率は2.3%と、5年前に比べて約半分で、通常の普通借家契約が大半となっています。
また、定期借家制度の認知については、三大都市圏の平均で「知っている」という人は17.2%、「名前だけは知っている」という人は18.5%。
知らないが64.2%で、知っている・名前だけは知っているの合計が35.7%と、知名度としては4割を切っています。

不確実性を排除するために創設された契約形態

定期借家契約は、従来型の借家契約が持つ、貸した建物が返らない、実家を改定できない、解約にも正当事由と立退料がいるがどのくかいかかるか分からないといった不確実性を排除するために創設された契約形態で、賃貸市場の活性化に期待が持たれていたのですが、スタートして18年を経過しますが、意外と伸び悩んでいる感じです。

また、不動産総合情報サービスのアットホームがまとめた、平成29年度1年間に成約した首都圏における居住用賃貸の定期借家物件数は、前年度比8.5%増の6585件。
同年度の普通借家契約が22万3162件ですから、全体の3%にも満たない割合です。

その内訳は、マンションが成約全体の6割近くを占め、次いでアパートとなっています。
エリア別に見ると、東京23区と神奈川県に集中し、東京23区が全体の532.%、神奈川県で22.2%となっています。




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