2018年8月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2018年8月号エスト賃貸経営新聞

全国的な賃貸住宅の新設抑制の背景と今後の見通し
5月の貸家の新設が前年比で12ヵ月連続の減少


今年5月の貸家の新設が前年比で5.6%減少となり、12ヵ月連続の減少となっています。
賃貸住宅市場の需給動向を反映していることが要因となっています。
ただ、市場では新築の人気が高く、お客様を呼び込む力が強いのが実態です。

賃貸住宅の新設抑制の動きを現場からの声として伝えているのが、日本銀行が7月9日に公表した地域経済報告書「さくらレポート」(2018年7月)。
支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告で、各地域の住宅投資について次の通りまとめられています。

「相続税の節税対応のための貸家建設需要は一巡し、減少傾向が続いている」(横浜)、「貸家は新築でも以前より低めの家賃設定とする物件がみられるほか、築古物件の空室率が上昇するなど供給過剰感があり、着工は低水準で推移している」(松江)、「貸家の着工は、金融機関の慎重な貸出態度が継続していることなどもあって、郊外を中心に減少している」(北九州)。
やや代表的な見解を取り上げましたが、ほぼ全国で共通する見方となっています。

ただ、新設の落ち込みを考える場合、相続税の節税対応や低金利を背景とした需要の盛り上がりの減退といった現象だけでは本筋を見逃すことになります。

例えば、内閣府が7月6日に公表した「今週の指標」で、建築工事関連費の動向について、「新築マンション発売価格が2013年以降高騰し、高止まりの状態が続いている。新築マンション発売価格高騰の背景の一つには、建築工事関連費の上昇があると考えらる」としています。
材料、工賃の上昇が建設費全体を押し上げると見ているものです。
今後、材料費、工賃の上昇がジワリと新設の負担にのしかかってきます。


1年少しで消費税率が2%上乗せされる予定

このほかにも、消費税率の増税を控えています。
2017年4月に予定されていた消費税率10%への引上げが2年半延期され、あと1年少しの来年10月に2%上乗せされる予定です。
建設費増に加え、付加される税金も負担となります。

それと、マーケットを構成している物件の実態も見逃せません。
賃貸市場で流通している賃貸住宅の平均築後年数は18.5年で、およそ新築~築23年ものが市場の約半数、築32年までで全体の約72%を占め、賃貸市場は新築~築30年余年の物件で構成されています。

このうち、平成27年以降の築3~4年クラスが約19%、平成17年~26年が約15%、平成7年~16年が約18%、昭和60年~平成6年が約21%となっています。
市場の物件で主流を占めているのは「平成の物件」です。

このようにまだしばらく、市場では新旧の需給調整が進み、その後一転して、新設が増え始める時期が来るのではないでしょうか。




ニュースフラッシュ
民間資金と公的資金による貸家建設が減少
北海道から沖縄まで大半で減少傾向見せる



賃貸住宅の新設は全国的にも減少傾向を見せていますが、国土交通省が発表した最新5月分の住宅着工統計によると、貸家の新設着工は、前年同月比5.7%減の3万1083戸で、12ヵ月連続の減少となっています。

民間資金による貸家が減少し、公的資金による貸家も減少したため、貸家全体で減少となったもので、今年1~5月の合計では、前年比7.0%減の約15万4000戸となっています。

前年同月比で12ヵ月連続の減少はやはり特筆されます。
これを都市圏別に見ると、首都圏、近畿圏で減少し、中部圏で増加。
地域別では、東北、中部で増加しているほかは、北海道から沖縄まで大半が減少です。

ただ、昨年6月以降、減少傾向を見せていますが、平成29年1年間では、過去10年で2番目の規模の個数ですから、今年も統計上まだ半年以上残しているので、今後の新設がどのような経緯を見せるのか、注目されるところです。




「宅配ボックス」普及に国土交通省本腰
必要度の高い設備として需要は伸びる一方


賃貸住宅に欲しい設備として「宅配ボックス」が人気を呼んでいます。
「働き方改革」が注目されている時だけに、宅配ボックスの設置は、あれば便利から必要度の高い設備となってきました。

賃貸住宅入居者が部屋を選ぶ際に欲しい設備に、エアコン付き、温水洗浄便座、都市ガスはよく知られていますが、今日では、宅配ボックス、TVモニター付きインターフォン、Wi-Fi、浴室乾燥機などが加わっています。

10年から15年ほど前は、一般的に分譲タイプに備わっている設備で、一見ぜいたく品でしたが、今では付いてて当たり前的になってきました。

中でも宅配ボックスは、ネットで買い物といった電子取引(EC)が急速に拡大して、需要は伸びる一方です。
実際、留守をしている時に荷物(宅配便)が届いた場合、その荷物を一時的に収納するボックスがあればどれほど便利か、一人暮らしや共働き夫婦には実感されることと思います。
一方、便利さで宅配便が増えるかたわら、二度足を運ぶ再配達が増え、CO2排出やドライバー負担などの社会問題を引き起こしています。

国土交通省、再配達率の削減目標を設定

国土交通省が今年4月に調査した宅配便再配達率は全国平均で15%、都市部で16.4%、およそ6件に1件で再配達されているようです。
また、調査会社、マイボイスコムの『宅配分の受け取り方法』のインターネット調査結果によると、直近1年間に宅配便の荷物が配達された頻度は、「月に2~3回」が約37%でボリュームゾーン。
「週1回以上」は2割強、「月1回以下」は4割弱となっています。

国土交通省では、宅配便再配達率などの問題に対応するため、宅配便の再配達率の削減目標を設定するなど、受け取り方法の多様化の対策に取り組んでいます。
宅配便の利用環境は今後作善することが期待されるのですから、利用がさらに増えることが予想されます。

宅配便の必要性、入居者ニーズを反映して賃貸住宅の募集サイトでも、「宅配ボックス」付きとして紹介されるケースが増えています。

ニーズがあれば、休息に成長を遂げるのが世の常ですから、宅配ボックスについても賃貸住宅へのAI、IoTの導入と歩調を合わせ、通信ユニットのアプリと宅配ボックスがセットされて、高機能化を果たしています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
まちを衰退させる「都市のスポンジ化」現象
一方、職育近接を求める若年層は増加傾向



多くの都市で発生している現象

「都市のスポンジ化」をご存じですか。
「都市の内部において、小さな孔が空くように、空き地、空き家等が、小さな敷地単位で、時間的・空間的にランダムに、相当程度の分量で発生すること」(国土交通省)です。
人口減少社会を迎え、地方都市をはじめとした多くの都市において発生している現象で、賃貸経営への影響も懸念されています。

空き地・空き家等の低未利用地がランダムに発生する「都市のスポンジ化」が進行すれば、生活利便性の低下、治安、景観の悪化、地域の魅力が失われることにもなりかねません。

このような「都市のスポンジ化」に対応するため、改正都市再生特別措置法が平成30年4月25日に公布され、この7月15日に施行されました。

低未利用地の集約等による利用の促進、地域コミュニティによる身の回りの公共空間の創出、都市機能のマネジメント等の施策を総合的に講じようとするものです。
利用頻度の低い土地の利用促進を図り、地域コミュニティの交流を活発にするのが狙いです。
まちの中で空き家や空き地が多発して、歯が抜けたようになるのは将来にかけてまちが荒んでいくだけに、行政が本腰を入れて対応してほしいところです。

ところで、6月に発表された平成29年度国土交通省白書によると、国民の住まい方に対して、「地方移住への関心は高まっており、特に、30代までの若い世代の増加傾向が見られる」とし、行政・民間の様々な取り組みにより、移住者の増加を実現する市町村が出現している、と取り上げています。
「都市部のスポンジ化」で、治安、景観の悪化が見られる一方で、職育近接を求める若年層が増える傾向です。

やはり国民の意識の二極化が大きく進行しているのが見てとれます。
これからの賃貸経営もこうした出来事をしっかり見極めることが必要なようです。




ちょっと一服
被災地に賃貸住宅5万4千戸を確保
万一の時に即役立つ賃貸住宅の役割



7月の豪雨により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復興をお祈りいたします。

今回西日本に限らず、気流や風向きで全国どこで発生してもおかしくないといわれる数十年に一度の桁外れな豪雨。
自然の猛威に改めて驚かされます。

地震や集中豪雨などの大災害の発生に対して、予備的な住居の役割を果たす賃貸住宅は、ある一定数の割合で確保するのが望ましいといった見方があります。

世帯数や人口比に対して、ギリギリの住宅の数ではなく、地域にある程度空き住居の余裕があれば、万一の時に即役立つという考え方です。

西日本豪雨に対しても、政府は被災者向けに被災地周辺の賃貸住宅5万4千戸をかくほした、と報道されています。

賃貸住宅をご案内する我々としましては、こんな非常時こそ賃貸住宅を有効に活用したいと改めて考える次第です。

8月のお盆が明けますと、暑さも一段落して、11月に続く秋の商戦が始まります。
暑さに負けることなく、怠りなく準備を進めたいと思います。




平成30年分「路線価」公表
今年の路線価は標準住宅地が3年連続で上昇
含み資産が増えた分、税の負担も増えます



相続税や贈与税計算の算定基準となる土地価格の「路線価」の平成30年分が国税庁から公表されました。

路線価は、相続税や贈与税の財産を評価するのに適用するもので、市街地の路線価(道路)に面する土地の1平方メートル当たりの単価(標準評価額)で、公示価格の80%程度となっています。
一般的に路線価と公示価格、市場で取引される実勢価格の目安になります。

今年の路線価の傾向は、全国約32万4000地点の標準宅地が前年と比べて0.7%のプラスと、3年連続で上昇しています。
都道府県庁所在都市の1平方メートル当たりの最高路線価で33年連続日本一になったのは、東京都中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前の4432万円で、前年比9.9%上昇。
過去最高を更新しました。

都市部を中心に上昇傾向を見せる
10都市のうち7都市が2桁上昇


都市部を中心に上昇傾向が広がり、上位10都市のうち、7都市が2桁上昇し、都道府県別では東京、愛知、大阪など18都道府県が上昇。
前年比の上昇率が目立つ沖縄の5.0%で、次いで東京4.0%、宮城県3.7%、福岡2.6%、京都府2.2%など。

賃貸経営と土地の関係ですが、地価が上昇すれば、すでに賃貸経営を始めている場合、含み資産が増えるともいえますが、その分、税の負担も増えることになります。
また、土地を所有しているケースでは、やはり地価が上昇した分、含み資産が増える一方で、税金にも影響するということです。

なお、相続で取得した土地の税金がいくらになるのかの評価方法として、路線価方式と倍率方式があります。
路線価方式は道路ごとに1平方メートル当たりの路線価が定められており、土地の面積をかけると評価額が決まります。



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